健康の「素朴な疑問」

お米を食べる量は減っているのになぜ糖尿病は増えてるのか

ゴハンが悪いわけじゃない
ゴハンが悪いわけじゃない

 ゴハンを抜くと痩せる、と言われているせいか、お米と糖尿病を結びつけてイメージしている人がいますが、正しくありません。

 実際、国民1人当たりのお米の年間消費量は1962年度の118キログラムをピークに減少に転じ、2019年度はその半分以下の53.2キログラムとなっていますが、逆に糖尿病になる人は増えています。

 厚生労働省糖尿病実態調査(1997年)では、日本人の約690万人が糖尿病が強く疑われる人と推計されましたが、令和元年(2019年)国民健康・栄養調査では、2019年の段階の推計で20歳以上で糖尿病が強く疑われる人数は1196万人、可能性を否定できない人が1055万人いると発表しているのです。

 ならば米食でなくパンや麺など小麦を食べる機会が増えたせいで、昔の人より糖質摂取が増えているのではないか。そう考える人もいるでしょう。たしかに国民1人当たりの小麦の年間消費量は1960年度の25.8キログラムから2019年は32.3キログラムと増えていますが、米の消費量の落ち込みを補うほどの増え方ではありません。もちろん、甘いお菓子や糖分たっぷりの飲み物が簡単に手に入ったこともあると思いますが、それでもこれほどまでに多くの人が糖尿病になるのは異常です。

 では、何が糖尿病を増やしているのでしょうか? 一時、日本人がマグネシウムを多く含む大麦や雑穀などを食べなくなった1960年代を境に糖尿病が増え始めたとして、マグネシウムの摂取と糖尿病との関連が注目されました。実際、マグネシウムはインスリンの働きを良くして糖の代謝を改善することが示唆されており、マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。しかし、これは必ずしも定説になっているわけではありません。

 むしろ便利になって体を動かさなくなったことが問題だと私は思います。

 実際に平成9年度(1997年度)国民栄養調査では一日の歩数は男性8202歩、女性7282歩だったのに、平成30年度(2018年度)では男性6794歩、女性5942歩と減少しています。

 お米には糖質以外にミネラルなど体に良い栄養素が含まれていて、お米に含まれるタンパク質は、小腸でつくられるホルモン(インクレチンの一種)を活性化させ、インスリン分泌を促進するという話もあります。糖尿病が気になる人はまずは普段、体を動かすことを考えた方がいいのではないでしょうか。

(弘邦医院・林雅之院長)

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