役に立つオモシロ医学論文

妊娠中のコロナワクチン接種で子供にも免疫が引き継がれる?

写真はイメージ
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 重症化しにくいといわれている子供の新型コロナウイルス感染症ですが、これまでに報告されている研究データ48件の統合解析によれば、1歳未満の乳児感染例では、重症化した子供が14%を占めていました。しかし、新型コロナウイルスワクチンの接種対象は5歳以上であり、乳児が使用できるワクチンは承認されていません。

 ただ、百日咳やインフルエンザなどでは、妊娠中の母親がワクチンを接種することで、生まれてくる子供にも免疫が引き継がれ、感染症から保護される効果が報告されています。そんな中、妊娠中の新型コロナウイルスワクチン接種と、生まれてきた子供に対する感染予防効果を検討した研究論文が、米国医師会の内科専門誌に2022年6月1日付で掲載されました。

 この研究では、2021年9月1日から2022年2月28日までの間にノルウェーで生まれた2万1643人の子供と、その母親が対象となりました。母親が妊娠中に新型コロナウイルスワクチンを2回、もしくは3回接種していたかどうかを調査し、ワクチン接種状況と生まれてきた子供の感染リスクが検討されています。

 その結果、生後4カ月の間に新型コロナウイルスに感染するリスクは、妊娠中にワクチンを接種していない母親から生まれた子供と比較して、ワクチンを接種した母親から生まれた子供で大きく減少していました。具体的には、デルタ変異株が流行している時期で71%、オミクロン株が流行している時期で33%、統計的にも有意な感染リスクの低下が示されています。

 論文著者らは「妊娠中の母親がワクチンを接種することで、生まれてきた子供に免疫が引き継がれ、ワクチンが使用できない乳児でも、感染予防効果が得られるかもしれない」と考察しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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