高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリを飲み忘れた…次回はどのタイミングで服用すればいいのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高齢者は処方されているクスリの種類がたくさんあるケースが多く、服用(使用)自体が複雑な方もいらっしゃいます。そんなときによくあるのが、「あ、飲み忘れてしまった!」ではないでしょうか? 薬剤師としては忘れずに服用していただきたいところですが、人間、誰しもうっかり忘れてしまうこともあります。そこで今回は、服用し忘れてしまったときの対処法についてお話しします。

 そうした場合の対処法は、クスリごとに決まっている用法(1日に服用しなければならない回数)によって異なってきます。クスリには1日1回服用すればよいものもありますが、1日2回、1日3~4回服用しなければならないものがあります。ポイントは「いつそのクスリを飲み忘れたことに気づけるか?」です。

 1日1回のクスリを服用し忘れてしまった場合、その日のうちに気づくことができればそのタイミングで服用しましょう。気づくのが翌日になってしまったときは仕方ありません。服用し忘れた分はスキップしましょう。本来であれば、朝や昼に1回のクスリと、夕方や寝る前に1回のクスリで対処が違うケースがあるのですが、ちょっとややこしくなってしまうのでこれで問題ありません。

 1日2回のクスリのほとんどは、朝と夕方に服用することになります。朝のクスリを飲み忘れてしまった場合は、昼食後までに気づくことができたらそのタイミングで服用しましょう。気づくのがそれより後になってしまったときはもう次の服用タイミングが近づいてきてしまっているので、1回分をスキップして夕方の分を通常通り服用してください。夕方のクスリを飲み忘れてしまった場合は、寝る前までに気づくことができたらそのタイミングで服用しましょう。

 1日3回のクスリを服用し忘れてしまった場合は、すぐに次の服用タイミングがやってきてしまいます。そのため、1回分はスキップして、次のタイミングから正しく服用するようにしてください。

 高齢女性の中には、骨粗しょう症の治療のために起床時にクスリを服用している方もいらっしゃると思います。そういったクスリは毎日ではなく週に1回、クスリによっては月に1回服用するだけでよいものが今は主流になっています。このクスリは多少日にちがずれて服用しても問題ないので、飲み忘れたことに気づいた翌日の起床時に服用するようにしましょう。

 クスリを飲み忘れたときの対処法は知っておいて損はありません。服用をスキップしても、次のタイミングで忘れた分も含めて2回分服用することはやめてください。また、飲み忘れたことをきっかけにクスリを自己中断することは絶対にしないでください。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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