高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリの一包化が「アドヒアランス」を妨げる一因になる

写真はイメージ

「コンプライアンス」という言葉をご存じでしょうか? 直訳すると「法令順守」になりますが、クスリの世界では「処方通りにクスリを服用・使用すること」という意味で用いられます。

 前回、クスリが増えやすい人の特徴として、処方された薬をきちんと服用(使用)していないケースが多いとお話ししました。こうした状態を「ノンコンプライアンス」といい、これが原因で入院となる場合もあります。

 ある疾患の治療のため、新しくクスリを追加することを目的として入院となった高齢の患者さんがいました。入院時のクスリの内容を確認したところ、その症例のクスリは、朝・昼・夕食後そして寝る前に服用するクスリが1回分ずつ一つにまとめられている、いわゆる一包化されている状態だったのですが、朝と昼の分の残数が異常に多いことに気付きました。そこで、主治医に対して「ノンコンプライアンスが原因で疾患の症状が悪化している可能性がある」と伝え、新しくクスリを追加する前にまずは今処方されているクスリをきちんと服用して経過をみることになりました。

1 / 3 ページ

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事