手術は日帰りでここまでできる

盲腸の根治的治療は手術 薬物治療だけでは再発する可能性あり

写真はイメージ
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 虫垂炎は、一般的には盲腸という呼び名で知られている病気です。

 虫垂とは、小腸から大腸に切り替わるあたりに付属する管状の臓器ですが、ここに何らかの原因で炎症が起きることで虫垂炎になるわけです。

 典型的な虫垂炎の症状としては、まずみぞおちからへその上周辺に痛みが起こり、その後、吐き気や食欲不振といった症状が現れ、その後にへその右下あたりの下腹部の痛みが続きます。中には発熱を伴う場合もあります。

 治療は2つ。「薬で散らす」と言われる抗生物質による薬物療法と、手術です。

 最近では、虫垂炎がひどい場合も含め、まずは抗生物質で症状を鎮め、落ち着いたタイミングで改めて手術で虫垂を切除する流れが一般的になってきました。緊急で手術を行う場合と比べ、手術前の検査や準備をきちんと行えることがメリット。術後の経過も安定するので、社会復帰も早くなります。

 患者さんの中には、「薬で痛みなどの症状が消えたのだから、手術の必要がないのでは?」とおっしゃる方、また手術をせずにそのまま過ごされている方がいます。根治的治療である虫垂切除を行うか否か、医師によって対応はまちまちですが、きちんとした説明と選択肢が与えられるべきだと考えます。

 なぜなら、薬物療法だけで治療を終えると再発するリスクがあり、その再発率は20%程度と決して低いとは言えない数字だからです。

 しかも再発した場合、手術する・しないにかかわらず、最低でも数日間の入院が必要となり、経済活動や家庭生活の中断を余儀なくされます。あらかじめ余裕を持って手術することのメリットは言うまでもなく、しかもその手術が日帰りならば、なおさらではないでしょうか。

 そもそも、元々ある虫垂を全て切除して大丈夫なのかとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。合併症がなく治療が行われた場合、後の日常生活に悪影響を及ぼすリスクは低いと思われます。むしろ炎症を繰り返す臓器をそのままにすることの方がよくないこともあります。

 虫垂炎の日帰り手術を受けるためには、薬で散らして痛みがなく、症状が安定していることが条件となります。散らし方については、通院による場合でも、4~5日の入院による場合でも、痛みがなくなっていれば一定の期間をおいて手術を行います。当院では元の炎症の程度にもよりますがおおむね1カ月程度としています。

 日帰り手術を考えている医療機関へ一度相談してみてください。

 当院で虫垂炎の日帰り手術を受けた患者さんは、薬物療法だけで治療を終えていた方、虫垂炎の再発を繰り返してきた方が少なくありません。例えば、過去に1回発作を起こし、1歳未満の子供がいるので手術を躊躇していたが、再発リスクがなくなるならと日帰り手術を決断された方、これまで4回発作があり、4回とも薬物療法で入院(合計15日入院)をされていた方ら。いずれも、虫垂炎による入院で日常生活や仕事に支障が出た経験があり、それゆえに日帰り手術のメリットを十分に理解している方々です。

大橋直樹

大橋直樹

日本外科学会認定外科専門医、全日本病院協会認定臨床研修指導医。東京外科クリニックグループでの日帰り手術の件数は2022年4月末日時点で3101件。

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