「ダイエットに取り組むんだったら、定期的にジムに行ったりしたらいいんじゃない?」
「ジムかぁ。でも、月々の会員費がもったいないから、もっとコスパ良くやせたいんだよね」
「だったら、ジョギングとかいいんじゃない? お金もかからないし、場所も選ばないし」
「う~ん、走るのはちょっと苦手でさぁ。あんまりモチベーションが上がらないなぁ」
まるでお笑いコンビのブラックマヨネーズさんのやりとりのようですが、自分のこだわり、趣味嗜好が邪魔して、やる気が芽生えない方もいるのではないでしょうか?
自分の嗜好と合致しないがゆえに、モチベーションが上がらず、トライしてみる気になれない──。そう考えて(言い訳して)しまう人は少なくないと思うのですが、好き・嫌いというのは、しょせん、自分がつくり出したバイアスに過ぎません。実際、やる気とモチベーションはあまり関係ないといわれています。
行動経済学者のダン・アリエリーは、モチベーションのある仕事に対して、あえて意図的にやる気を失わせる実験(2008年)を行っています。
「シジフォス実験」と銘打ったこの実験では、レゴが大好きな被験者を対象に行われました。内容は、レゴを組み立ててモノを作るように指示し、完成したら被験者の目の前で成果物を解体する。それを何度も繰り返し、どのタイミングで被験者がやる気を失うかを調べたというのです。まるで賽(さい)の河原のような光景です。
結果、やる気を失わせるには回数ではなく、シンプルにその人の仕事を無視し、徒労感を与えればいいということでした。半面、やる気を出させるには、その人の仕事を認め、ねぎらいの言葉をかけてあげればいいということでした。
たとえ自分が大好きでこだわりがある仕事だったとしても、相手にされなく、徒労感を感じてしまえば、人はやる気を失ってしまいます。反対に、さほど興味がなく、モチベーションが上がらなくても、やってみた結果を人から褒められれば、やる気は思いのほかすくすくと育つ……。なんとも人間は現金な生き物なのです。
先の会話で言えば、ジョギングが苦手な人も、第三者から「最近、やせた?」とか「顔色がよくて健康的だね」などと言われれば、その気になってしまうのです。手応えをどうやってつくり出すかが大事であって、好きか嫌いかはさほど重要なことではないのですね。
ですから、好きか嫌いかはひとまず置いておいて、“なんでも一生懸命やってみる!”が大事です。一生懸命やるからこそ誰かが褒めてくれて、脳は“やる気”になっていきます。そうすると自然と楽しめるようになってくるから、人間は都合がいいと同時に、不思議な生き物です。
言葉としておかしいかもしれませんが、「やる前からやめる」のではなく、「やってみて、イヤだと感じたらやめる」がポイント。「とりあえずやってみる」クセをつけることが大切ですよ。
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