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認知症の平均余命は? 亡くなるまで介護が不要な人の特徴

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症の平均余命は、一般的に治療の開始時期にもよりますが、発症から5~12年といわれます。大規模な生活習慣病の疫学調査として知られる「久山町研究」(1961年から実施)によると、アルツハイマー型認知症は、10年生存率が18.9%、血管性認知症は13.2%、レビー小体型認知症は2.2%と報告されています。

 たとえば、認知症全体の6割以上を占めるアルツハイマー型認知症の場合、進行は比較的緩やかですが、多くは発症した時点ですでに進行しています。2~3年経って分かりやすい症状が出たことで、診断を受ける患者さんが多いので、実際は余命がもっと短い人もいます。

 進行がはじまっていれば、脳に原因物質であるアミロイドβが蓄積しています。

 そのため根本的に進行を止めることはできないと考えた方がよいでしょう。

 現在、アリセプトやレミニールといった認知症の進行を遅らせる薬も出ていますが、過去の例からみても発症しはじめてから飲んでも、著しい効果はありません。余命を延ばすほどの期待はできないでしょう。

 そもそも、なぜ5~12年しか生きられないのかといえば、アルツハイマー型認知症は1年、2年と時間の経過とともに、時間が分からなくなったり、病院などに通うといった行動もできなくなります。

 重度になれば着替えや食事を取ることも忘れてしまって、排泄(はいせつ)も自分でできなくなってしまいます。最終的に寝たきり状態となれば、体力は低下し、免疫力もなくなるため、誤嚥(ごえん)性肺炎を発症したり、認知症以外の持病を悪化させてしまいます。こうして結果的に10年前後で衰弱し、寿命を迎えるのです。

 認知症を患っても介護生活を短くするなら、少しでも進行していない状態で発見することです。認知症の手前の状態(もの忘れと認知症の中間)である「軽度認知障害(MCI)」の兆候があるかどうか診断することが重要です。採血で調べられますから、気になる方はぜひ受けてください。

▽森川髙司(もりかわ・たかし) 奈良県立医科大学卒業、奈良県立医科大学付属病院で臨床研修医(第2内科)。その後、吉野病院、田北病院内科医長、向山病院副院長などを経て、尼崎市塚口の地に医療法人煌仁会森川内科クリニックを設立。現在、産業医や校医も務める。

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