腎臓病は初期症状なし 採血と尿検査が早期発見の唯一の手掛かり

アルコールの利尿作用により脱水状態に
アルコールの利尿作用により脱水状態に

 アルコールでダメージを受ける臓器といえば肝臓が真っ先に頭に浮かぶだろうが、夏場の飲み会では腎臓にも注意が必要だ。

 アルコールは利尿作用があり、体が脱水状態に陥りやすい。すると腎臓に流れる血流量が減少し腎臓にダメージを与える。さらに血圧の薬、痛み止め、骨粗しょう症の薬を飲んでいると、これらの薬にはもともと腎血流を下げる作用がある。夏場の脱水と重なりダブルパンチ、トリプルパンチになることもある。 

「症状がないから大丈夫」と思っている人もいるだろう。それは大間違いだ。赤羽もり内科・腎臓内科(東京都北区)の森維久郎院長が言う。

「腎機能が低下し慢性腎臓病(CKD)を発症していても、体のだるさなど何らかの症状が出てくるのは重症になってから。それまでは全く症状がありません。『健診で数値の異常を指摘されたが、症状がないので放置していたら人工透析に』という患者さんは少なくありません」

 腎臓は、機能低下があるレベルを超えると治療を受けても元の状態には戻らない。そのままCKDが進行すると腎不全となり、血液透析、腹膜透析、腎移植のいずれかの治療が必要となる。

 全国腎臓病協議会の調査では、透析患者の97%が週3回以上の透析治療、89%が透析1回に4時間以上。日常生活への負担が大きい上に、透析患者は心不全、感染症、脳卒中、認知症を起こしやすく、生命予後は透析でない人より短い。透析に至る前、理想を言えば少しでも症状が軽いうちに病院を受診し、治療を開始することが非常に重要なのだ。 

「どれくらい腎臓が悪いかを調べるには、採血と尿検査が唯一の手掛かり。チェックすべきは、eGFRとタンパク尿です。簡単に説明すると、eGFRは現在の腎臓の状態。そしてタンパク尿は腎臓の未来の状態であり腎臓のSOSです」

■薬局で買える試験紙でタンパク尿を調べる方法も

 まずは、現在の腎臓の状態を示すeGFRをどうみるか? 健診の項目に組み込まれていることが多い。もしeGFRが項目になく、代わりに「クレアチニン」があれば、クレアチニン値、年齢、性別からeGFRを計算できる。自動的に計算してくれるサイトがあるので、それを利用するといい。

 eGFRはイメージとして若い健康な人の腎臓の能力が100として、あなたのeGFRが50なら「比較して腎機能が50%に低下している」ということ。ステージ1~5の5段階に分けられ、ステージが進むほど腎機能が低下している。

「eGFRが低い場合、『高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因』『免疫や遺伝の病気が原因』『腎臓を悪くするサプリメントや薬の服用などのその他の原因』のいずれかが考えられます。どれに該当するかを調べるため、腎機能を詳しく診るための採血や尿検査、腎臓エコー検査を行います」

 次に、タンパク尿だ。eGFRが正常、または軽度の低下でも、タンパク尿が出ている場合がある。「現在は腎機能が少し低下している程度だが、未来に向けて腎臓がSOSを出している状態」だ。

「健診ではタンパク尿が出ている場合、『1+』『2+』『3+』といった形で表されます。『2+』以上なら腎機能低下が疑われるので、速やかに医療機関を受診し、『定量検査』という詳細な尿検査を受けて、腎機能が異常なためにタンパク尿が出ているのかどうかを調べてください」

 一方、「1+」なら医療機関の受診が望ましいが、その前に薬局でタンパク尿を調べる試験紙を購入し、自宅で寝る前に完全に排尿し、翌朝の一番の尿で測定してみるという手もある。タンパク尿の場合、健診では「定性検査」という簡易的な方法で調べるため、検査時の体の水分の状態などコンディションに影響されやすい。もう一度簡易的な検査で、タンパク尿の有無を調べるのだ。

「結果が『+』なら医療機関の受診を」

 記者は人工透析を受けている人に取材をしたことがあるが、口をそろえて「こうなる前に治療を受けるべきだった」と言っていた。正しい知識で腎臓を守ろう。

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