健康の「素朴な疑問」

なぜ男性より女性の方が長生きなのか? 平均寿命の差は6年超

女性の方が病気になりにくい
女性の方が病気になりにくい(C)日刊ゲンダイ

【Q】 妻が高校生の娘に「将来、男に頼って生きていこうなんて思っちゃダメよ。男は女より早く死んじゃうんだから。手に職をつけなさい」と言っているのを聞き、妙に納得しました。男が女より短命なのはなぜですか?

【A】 厚生労働省が2022年3月に発表した「第23回生命表(完全生命表)の概況」によると、20年の平均寿命は男性81.56歳、女性87.71歳で、男女の差は6年超になっています。

 他の国でも男性よりも女性の方が長生きです。米国疾病対策センターの調べでは20年の米国男性の平均寿命は74.2歳、女性は79.9歳でした。

 では、この差は男女が置かれている社会的要因なのでしょうか? あるいは生活習慣の違いなのでしょうか? それとも生物学的要因でしょうか?

 恐らくは後半の2つの要因がミックスされた結果だろうと思います。

 社会的要因という点では、男性は仕事でストレスを抱え、家庭にいる女性に比べて過酷だと言う人もいますが、子育てや親の面倒など自由度の少ない女性が、必ずしも男性に比べて有利な扱いを受けていたとは考えられません。男女平等が長く主張されているように、むしろ男性の方が優遇されていた面も多かったのではないでしょうか。

 生活習慣でいえば、男性の方が女性に比べ飲酒や喫煙、暴飲暴食、冒険的行動など寿命を押し下げる行動をしがちです。とはいえ、平均寿命における男女差の一番の要因はもともと女性の持っている力、すなわち生物学的要因だろうと思います。人間に限らず動物はオスよりメスの方が長寿であること、同じ生活環境だと思われる欧米の宗教団体の中でも明らかに女性の方が長寿であること、がんなど病気になっても女性の方が長く生きる傾向にあることから推測されます。

 ではなぜ男性より女性の方が生物学的に強いのでしょうか? その原因は、女性ホルモンは免疫を活性化させるのに対して、男性ホルモンは免疫力を低下させる働きがあるからだといわれています。つまり、男性に比べて女性の方が病気になりにくいからだというのです。

 では、男性同士でも男性ホルモンが多い人と少ない人とでは男性ホルモンの分泌量の違いがあるので、寿命に差があるのではないか、との疑問が生まれます。しかし、男性ホルモンが多いとされる、性欲の強い人や薄毛の人が必ずしも短命というわけではありません。男性ホルモンの多い男性は、肥満になりにくく糖尿病などになりにくいからです。

(弘邦医院・林雅之院長)

関連記事