科学が証明!ストレス解消法

動けないのは「決定回避の法則」と「現状維持の法則」のせい

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 選択肢が増えすぎると人は動けないと言われています。米コロンビア大学のシーナ・アイエンガー博士は、「選択の科学」という本の中でこんな事例を紹介しています。

 スーパーでジャムを販売する際、試食の数を6種類と24種類にしたら、売り上げはどう変わるのか? 米スタンフォード大学のマーク・レッパー博士と実験(2000年)を行ったそうです。

 なんとなく試食の数が多い方が売れるような気がしますが、結果は24種類の試食よりも、6種類の試食の方が売り上げが勝っていました。

 こうした傾向をアイエンガー博士は「決定回避の法則」と「現状維持の法則」と名付けています。「決定回避の法則」は、選択肢が多すぎるとかえって選べなくなること。「現状維持の法則」は、その結果、いつもなじみのあるものを選んでしまうこと。

 電力が自由化したとき、いろいろな電力プランが増えましたが、結局のところ何がお得で何が変わるのか分からず、現在使用している電力プランのままというケースが散見していました。

 あるいは、中華料理店で目が回るくらいのメニューがあるにもかかわらず、無難な「ラーメン」や「チャーハン」を頼んでしまう人は少なくないでしょう。

 こうした心理傾向こそ、まさに「決定回避の法則」と「現状維持の法則」です。選択肢がありすぎて、「動かない」という選択をしてしまうのです。

 これは情報においても同じです。情報過多になると人は情報の波にのまれ、まともな思考ができなくなってしまいます。

 分厚い説明書を見せられ、「結構です。それでいいです」などと相手の意のままに同意してしまうなんてことがありませんか? こういった接客が少なくないのは、選択肢が多かったり、情報が多いことで思考停止に陥る人間のロジックを応用しているからなのです。説明している側は意図的に情報過多にしているわけですね。

 周りから、あーだこーだと言われると、「ああ! うるさい!」と、まともな判断を選択しづらくなってしまうのも、オーバーヒートを起こしているから。

 また、やることが多すぎると、“やる気”が起こりづらくなるのも似ているでしょう。やるべきことが多すぎて「決定回避の法則」と「現状維持の法則」に陥っているのです。

 そうならないためには選択肢を減らす作業が必要になります。

 仕事や家事の中でも、比較的自分が好きなもの(得意とするもの)と嫌いなもの(苦手なもの)があるはずです。やることが山積みで何も手につかない人は、まずは「やるタスク」をすべて書き出して、その中から特に重要なものを「〇」、急いでやらなくてもいいけどやっておいたほうがいいものを「△」、後回しにしていいものを「?」という具合に、ランク付けしてみるといいでしょう。たったこれだけで気持ちも軽くなりますから「やってみよう」と思えるようになるはずです。

◆本コラム待望の書籍化!2022年11月24日発売・予約受付中!
『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

関連記事