60歳からの健康術

性感染症編(4)60歳以上の「いきなりエイズ率」は50%以上 免疫力低下で発症も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 最近アッチ系の経験がないから性感染症は自分とは無関係。そう思い込んでいる人は多いが、考えを改めた方がいい。自分でも気づかないうちに感染していて、免疫力が低下した高齢者になって症状が出る性感染症もある。

性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック新宿」の尾上泰彦院長に聞いた。

「以前もお話ししましたが近年多くなっているのは新規感染報告者数に占めるエイズ患者の割合、つまり『いきなりエイズ率』です。これはHIVに感染しているのに気づかずに放置した挙げ句に突然エイズ発症を告げられるものです。これまでは20~25%を推移していましたが、令和3年8月24日のエイズ動向委員会によると、令和2年には31.5%に上昇しています」

 ちなみに令和2年に新規に報告されたHIV感染者数は750人(うち60歳以上22人)、エイズ患者は345人(同27人)で、その合計は1095人。60歳以上のいきなりエイズ率は55.1%となり非常に高率であることがわかる。

 一方、同年末の累計報告者数はHIV2万2489人、エイズ患者数は9991人、計3万2480人だ。

 エイズはHIVに感染して2~6週間にインフルエンザと同じような発熱、リンパ節の腫れ、咽頭炎、皮疹、筋肉痛、頭痛、下痢のいずれかの症状が現れる。数週間ほどで症状が消えてしまい5~10年ほどの無症候期に入る。この間、症状があっても軽度のため、風邪やインフルエンザと自己判断してしまい、気がつかないことも多いという。

「HIVが体内に入ると、免疫の仕組みの中心となっているヘルパーTリンパ球という白血球などに感染し、体を病気から守っている免疫力を低下させていきます。そして本来なら自分の免疫力で抑えられる病気を発症するのです。ですからエイズ発症は、23の主要となる代表的な疾患を発症した時点で診断されます。この23の疾患以外、例えば60歳過ぎて伝染性軟属腫、いわゆる水いぼが急に増えたとすれば、エイズを疑う場合もあります」

 いま若い女性を中心に感染拡大中の梅毒も感染にかかっていることを知らず、自然と治ってしまうケースが推定で2割くらいいるという。

「別の病気で病院からもらった抗生物質が効いたとみられるケースもあります。ただ、これは未治療ですので、加齢で抵抗力が失われれば再発したとしてもおかしくないかもしれません」

 気になる人は感染症対策の医師のもとを訪ねるといいだろう。

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