60歳からの健康術

性感染症編(5)EDだけじゃない 糖尿病の男性は包皮炎に注意

写真はイメージ
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 糖尿病を放っておくと、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害といった合併症を発症することが知られている。しかし、それは男性のプライベートゾーンにもさまざまな異変を引き起こす。「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)の著者で日本性感染症学会の功労会員でもある「プライベートケアクリニック新宿」の尾上泰彦院長に聞いた。

「重度の糖尿病ではED(勃起障害)のリスクが高まることが知られています。正常な勃起には血流だけでなく、脳や神経、海綿体などが正確かつスムーズに動かなければなりません。ところが糖尿病になると神経障害により、脳で感じた性的刺激を正しく陰茎に伝えられなくなったり、海綿体が機能不全に陥ったり血流が不足するなどしてEDになってしまうのです」

 重度の糖尿病でのプライベートゾーンの“異変”はそれだけじゃない。糖尿病性包皮炎もそのひとつだ。

「長い間、高血糖状態が続くと柔らかいはずの包皮の先端(包皮輪)が硬く白くなり、縦に亀裂がいくつも入るようになります。包皮輪は本来、勃起が可能になるよう“遊び”がありますが、それがなく、包皮輪をむこうとすると裂けて出血します」

 亀頭部分や包皮が、かゆみや痛みが伴い、赤くなることがある。カンジダ性亀頭包皮炎と呼ばれる病態だ。

「糖尿病になると真菌の一種である常在菌のカンジダ菌と他の常在菌のバランスが崩れてカンジダ菌が性器に増殖する、『性器カンジダ症』を男女ともに発症する可能性があります。男性はそこからカンジダ性亀頭包皮炎になることがあるのです」

 包皮炎になった人が怖いのは包皮の傷によって梅毒や尖圭コンジローマなどといった他の性感染症を合併しやすくなることだ。

 しかもこれらの病気は糖尿病が原因だが、60歳以上の男性は糖尿病になりやすいから注意したい。

 実際、厚生労働省の令和元(2019)年の「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる人」の割合は、全体では男性19.7%だが、60~69歳では男性25.3%とその割合が高くなっている。

 糖尿病専門医はパンツの中を見ない。そのため、見つかりにくいし、多くの人はそうした病気があることも知らない。しかし、糖尿病の影響はプライベートゾーンにも及ぶことは覚えておくことだ。

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