名医が答える病気と体の悩み

数カ月で進む急速進行性認知症(RPD)はどうして起こるのか

写真はイメージ
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 認知症のほとんどは数年から10年程度かけてゆっくり進行していきますが、数カ月から1~2年以内に急速に進行する認知症もあります。

 これは「急速進行性認知症(RPD)」と呼ばれ、原因はいくつかありますが、約6割がプリオン病によるものです。

 主に「クロイツフェルト・ヤコブ病」で、脳物質になんらかの原因で「異常プリオンタンパク」が蓄積し、認知機能障害を起こします。

 早い人では週単位で進行し、1週間前には料理ができていたのに、包丁の握り方や火の使い方が分からなくなっているケースもあります。私の患者さんでも、電車を使い外来で検査に来て、1週間後に結果を聞きに来る際に改札の通り方が分からなくなってしまったケースがありました。

 数カ月以内には寝たきりになることが多く、現在の医療では効果的な治療法が確立されていません。治療はできませんが、家族と過ごす時間を無駄にしないために、痛みや症状の緩和、介護の場所など準備をしてほしいと考えています。

 一方、約4割は非プリオン病が原因で、自己免疫疾患(甲状腺機能低下症)、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫、感染症が挙げられます。非プリオン病の場合は根本的な病気の治療を行えば、認知機能が改善する可能性があります。

 たとえば、甲状腺機能低下症は症状として体のむくみや倦怠(けんたい)感、そして認知機能の低下があります。服薬による治療で症状を緩和することによって、認知機能低下を改善させます。

 また、腫瘍や慢性硬膜下血腫によって判断力の低下、人格や性格の変化など、認知症と近い症状が進行するケースが多い。治療としては外科手術や放射線治療、薬物療法などを行い原因の除去や縮小させることで、認知機能障害が改善します。

 感染症には、ウイルス性脳炎や進行性多巣性白質脳症、梅毒、真菌感染などさまざまな原因がありますが、薬物治療で感染症の治療をしていきます。

 いずれにしても、家族が数週間や1カ月以内で、日常生活に異変があれば急ぐ必要があります。脳神経内科や認知症外来などを訪ねてください。

▽塚本浩(つかもと・ひろし)けんせいクリニック院長。帝京大学医学部神経内科助教、同医療技術学部臨床検査学科准教授、東京医科大学茨城医療センター脳神経内科臨床准教授を務める。日本神経学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。

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