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若年性認知症の原因と初期症状は?50代での発症も増えている

写真はイメージ
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 若年性認知症は、64歳までに発症した認知症で、18歳から39歳までに発症した「若年期認知症」と40歳から64歳に発症した「初老期認知症」の総称になります。まだ少数ではありますが、診察していると50代で認知症を発症するケースは増えていて、近年、認知症は若年化している印象があります。

 若い患者さんの場合、脳神経外科には、大半が精神科から紹介状をもらって訪ねてきます。患者さん本人も、当初は「仕事の作業の手順が分からなくなった」「物忘れが増えた」といった自覚症状により、若くして仕事ができなくなってしまうのでは、という不安で精神的に参ってしまい、抑うつ状態になることから、うつ病や精神疾患の治療を求めるためです。精神科でも脳MRI検査は受けられますので、早期発見のためにも、自身や家族の症状に異変を感じたら脳を調べてもらうことをおすすめします。

 認知症で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、若年性認知症の場合、微小な脳卒中のあとに起こる脳血管性認知症が大半です。脳に小さな梗塞が多発することで脳細胞にうまく酸素が行き渡らず、脳がダメージを受けてしまうことで起こります。脳の血管障害は機能の完全回復が期待できないため、とにかく予防が大切です。

 血管障害は動脈硬化によって起こるケースが多く、食生活や生活習慣が乱れている方は要注意です。先日、医学雑誌Neurologyに掲載された「超加工食品消費と認知症リスクとの関連」によると、「超加工食品(UPF)のより高い消費は認知症のリスクが高いことと関連していた」ことが分かっています。化学調味料が多く含まれるカップ麺や日持ちのするドーナツなどは減らしましょう。

 若年性認知症の原因として次に多いのがアルツハイマー型認知症で、若年性アルツハイマーの場合、遺伝によるケースがあります。ただし、アルツハイマー型なら早期発見により、進行を遅らせる薬やリハビリテーションによって、生活できるだけの脳機能の維持が見込めます。

 ほかに前頭側頭型認知症のひとつ、ピック病も若年性の原因になります。脳の一部が萎縮し、理性的な行動ができなかったり、言葉が出にくくなる病気です。また、ごくまれですが、若い方でも大腿骨骨折などでエコノミークラス症候群を発症し、それに伴う脳梗塞で認知症を引き起こすケースもあります。

 いずれにしても、健康な生活を心がけ早期発見のために40代から脳ドックを受けましょう。

▽石川久(いしかわ・ひさし) 2007年近畿大学医学部初期研修医、09年に近畿大学医学部救命救急センター助教、12年に帝京大学医学部救命救急センター(現高度救命センター)助手などを経て、18年に帝京大学医学部脳神経外科助手、21年8月から国際医療福祉大学三田病院脳神経外科講師。救急科専門医。

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