科学が証明!ストレス解消法

相手に何かをしてもらいたければ親切の先手を…好意の返報性

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人間関係において距離感を縮めるというのは、大きなテーマだと思われます。

 心理学の世界には、相手の態度に対して自分も同様の態度で相手に返す「返報性」と呼ばれる概念があります。好意、敵意、譲歩、自己開示などいくつかの返報性があるのですが、ポジティブにもネガティブにも作用する、たとえば「好意の返報性」と呼ばれる心理学用語があります。

 端的に言えば、誰かに何かをしてもらったとき、自分も何かお返しをしなければと思ってしまう心理的作用。コーネル大学のリーガンは、「美術鑑賞」という名目で被験者を募った実験(1971年)を行っています。

 この実験では、被験者に加え、もう1人のサクラである被験者を用意し、「被験者+サクラ」の2人1組で作品の評価をしてもらいます。その際、被験者を次の2つのグループに分けて行いました。

【グループ1】作品評定の合間の短い休憩中に、サクラが10セントのコーラを1本おごるグループ

【グループ2】作品評定の合間の短い休憩中に、サクラが何もしないグループ

 鑑賞後、サクラは被験者に対して、「私は新車が当たるクジつきのチケットを販売しているのですが、よろしければ1枚25セントのチケットを何枚か買ってもらえませんか?」と告げたところ、コーラを渡された【グループ1】は、何も渡されなかった【グループ2】よりも、2倍もの割合でチケットを購入したといいます。

 上記は、モノを与えることでどのような返報性が働くかを示しましたが、優しさや励ましの言葉も、十分相手に伝わる好意です。親切にしてもらうと、その分、自分も親切にしてあげたいと思いませんか?

 裏を返せば、「倍返しだ」というフレーズが流行しましたが、仕事や生活で嫌な目にあったら、思わず反撃したくなるのも返報性によるところが大きいのです。嫌な態度をされたときに「目には目を、歯には歯を」で応答すれば、延々とストレスフルなラリーが続いてしまうので、相手にしないという判断も大事でしょう。

 そして、距離を縮める際は自己開示も有効です。腹を割って話してくれたり、本音を話してくれたりする人を見ると、「自分を信用してくれているんだな」と感じると思います。ただし、過剰な自己開示は厳禁です。

 心理学者のルービンは、空港の出発ロビーで待っている初対面の人に、突然、自己開示を行うというユニークな実験(1975年)を行っています。その際、自己紹介程度の自己開示であれば、相手も同様の自己開示を返すと判明した一方で、それ以上の自己開示だと相手が乗ってこないことも判明しました。自分のペースで自己開示をしても相手には響かないのです。

 自分をさらけ出すことに抵抗を覚える人もいるでしょうが、本気で相手に何かを伝えたいときは、等身大でぶつかるべき。真剣さや必死さが伝わった結果、相手も心の扉を開いてくれるのです。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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