「クワイエット・クイッティング(Quiet Quitting)」という言葉が、TikTokでバズっています。直訳すると「静かに辞める」ですが、別に仕事自体を辞めるわけではありません。「もう必要以上に一生懸命働かない」という意味です。
みなさんも覚えがあるでしょう。上司に良いところを見せようと、言われた以上の仕事を必死でする。同僚の仕事が遅い分を助けてあげる……。そういうことを一切やめようというのです。
なぜこれが話題なのでしょうか?
今年初め、アメリカの「パンデミック大辞職時代」のトレンドについて書きました。コロナ感染のリスクが高いのに、小売やサービスの仕事の報酬が低すぎる。ずっとリモートだったのに対面に変わるのが嫌。または元々あったストレスが一気に襲いかかってきて、メンタルをやられてしまうなど、様々な理由で多くが職場を去っています。実に働く人の4割が今の仕事を辞めようと考えていると言われています。
しかし、そう簡単には辞められない。そこで若者たちが発見したのが「一生懸命働くのはやめる」という選択です。
どんなに必死で働いても時給は上がらない、頑張るだけ頑張って体も心もヘトヘトなのに、辞めたくても辞められない。でも会社の都合でいつ首を切られるかわからない。そんな仕事環境の中で、アメリカ人の6割近くが疲れ切っているという数字もあります。
それならメンタルを守るためにも、言われた通りの仕事だけを淡々とする。つまり、職場でのワーク・ライフ・バランスを確保すること。それが「クワイエット・クイッティング」だと言うのです。
確かに私たち働く者にとって、人生の3分の1は仕事に費やしていることになります。ましてやリモートとなると、どこまでが就業時間なのかも曖昧になりがち。
アメリカの職場の文化、日本とは違う部分もありつつ、新たな意味でのワーク・ライフ・バランスが必要な時代がやってきているのかもしれません。
ニューヨークからお届けします。