【Q】あくびは眠くなったり退屈なときに出ますが、何のために出るのでしょうか? また、あくびはうつるというのは本当ですか。
【A】ハッキリとはわかっていません。そもそもあくびは人間だけでなく脊椎動物も行っていることが報告されています。なぜあくびをするのか、については多くの仮説がありますが、有名なのは「血液中の酸素を増やすため」という説があります。しかし、実際に酸素や二酸化炭素の濃度を変えてもあくびに変化がなかったことから現在では否定されています。
代わって有力になっているのが「脳を冷やす」説です。あくびにより筋肉を収縮させ、深く息を吸い込むことで脳を冷却しているのではないか、というのです。
もしこの考え方が事実であれば、脳の大きな動物は脳を冷やすためにはより長くあくびをすることになります。そこでオランダや米国の大学研究チームが101種類の哺乳類と鳥類のあくびの長さを調べたところ、予想通り、脳の重量などが大きい動物ほどあくびの持続時間が長いことがわかったそうです。
また、人間では他人のあくびを見ていると自分もあくびが出てしまうことがありますが動物ではわかっていませんでした。そこで、実際に他の動物であくびが伝染するかを日本と英国の研究者が共同研究してその結果を英国王立協会報(生物学・電子版2004年7月21日号)に報告しています。
研究では、母親チンパンジー6頭に対し、知っているチンパンジーがあくびをしているビデオとただ口を開けただけのビデオ、知らないチンパンジーがあくびをしているビデオとただ口を開けているビデオを見せて、あくびの回数を調べています。その結果、あるチンパンジーはあくびのビデオに反応して24回あくびをしたのに対し、口開けビデオでは2回でした。別のチンパンジーはそれぞれ25回と4回で、他の4頭は統計的な差はなかったそうです。
おもしろいのは、ビデオはそれぞれの子供のチンパンジーも一緒に見たにもかかわらず、子供は誰もあくびをしなかったそうです。人間の研究でも2歳から11歳までの子供にあくびのビデオを見せたり、あくびにまつわる話をしたところ、4歳以下ではあくびが出なかったそうです。つまり、あくびが出るのは知性のある証拠でもあるのです。
(弘邦医院・林雅之院長)
健康の「素朴な疑問」