健康の「素朴な疑問」

おしっこは無色透明なほうが健康なの? じつは病気のサインかも

 無色なら健康なの…?(写真はイメージ)/(C)PIXTA
 無色なら健康なの…?(写真はイメージ)/(C)PIXTA

【Q】おしっこの色で健康状態がわかるという話を聞きます。ならば、無色透明の方が健康ということでしょうか。

【A】 私の患者さんからも「無色透明というのは尿に不純物が混ざっていないということだから健康なんでしょう?」と聞かれることがあります。しかし、それは間違いです。

 お酒を飲んだ翌朝はアルコールと一緒に余分な水分が尿として出ていきます。そのため無色に近い尿が出ることがあります。そのようにたまになら問題ありませんが、無色透明の尿が長く続くようなら糖尿病になっている疑いがあり、危険信号だと言えます。

 正常な尿の色は薄い黄色です。尿の原料は血液の中にある赤血球に含まれるヘモグロビンと呼ばれるタンパク質です。主に鉄からなる赤い色のヘムと、グロビンと呼ばれるタンパク質からできていて、肺で酸素と結合して全身に酸素を運搬する働きがあります。全身で120日間ほど働いた後、脾臓と呼ばれる臓器で解体されます。

 このときヘムは黄色の代謝物であるビリルビンに変換されます。この物質はさらに肝臓に運ばれて処理された後に、脂肪の消化を助ける液体である胆汁に排泄されます。

 その後、腸に運ばれたビリルビンは腸内細菌により黄色のウロビリノーゲン、茶色のステルコビリンに変化します。そして、ウロビリノーゲンの一部は腸管から再び血液中に吸収され、腎臓を経て尿中に排泄されるのです。つまり、尿の色はウロビリノーゲンの色である黄色というわけです。

 ではなぜ、糖尿病の人は無色透明の尿が出るのでしょうか? それは、血液中の血糖値が高いため、体内の水分が濃度の低い方から高い方に移行する浸透圧の働きによって、健康な人に比べて血液中の水分が多くなるからです。

 血液中の老廃物を除去する働きがある腎臓は無駄な糖分を排出するときに一緒に大量の水分を排出します。すると、大量の水が尿中のウロビリノーゲンの黄色を薄めて、無色透明になってしまうのです。よく、糖尿病の人が多尿で頻繁に水分を欲しがるのはこのためです。

 逆に尿の色が濃い黄色になるのは尿中の水分が少ないからで、熱中症などによる脱水である可能性があります。

 また、脾臓や肝臓の働きに異常がある場合が考えられます。

 むろん、持病のある人は薬によってその傾向が強く出る場合があります。気になる人はかかりつけ医に相談するといいでしょう。

(弘邦医院・林雅之院長)

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