一般的な成人は、1日のうち9~10時間を座ったままで過ごすそうです。特に事務職(オフィスワーカー)の方では、勤務時間の7割以上を座って過ごすと報告した調査結果もあります。
座位時間(座っている時間)が長いことは、心臓病、糖尿病、がん、うつ病など、さまざまな病気の発症と関連していることが知られています。そのため、WHO(世界保健機関)や各国の保健当局は、座位時間が増えすぎないよう注意喚起を行っています。
とはいえ、リモートワークが普及した現代社会において、座位時間を減らすことが難しい方も多いでしょう。そんな中、座位時間を減らすための方法と、その効果を検証した研究論文が、英国医師会誌の電子版に2022年8月17日付で報告されました。
英国で行われたこの研究では、オフィスに勤務する事務職756人(平均年齢44.7歳)が対象となりました。被験者は、オフィス環境の改善やグループワークなどによる行動変容プログラムを受ける群、行動変容プログラムに加え、高さが調節可能な机を導入する群、普段通りの生活を続ける群の3群にランダムに振り分けられ、1日の座位時間が比較されました。なお、高さが調節可能な机を導入した群では、事務作業中に座位と立位を自由に切り替えることができました。
1年にわたる追跡調査の結果、座位時間は普段通りの生活を続けた群と比べて、行動変容プログラムを受ける群で22.2分/日、行動変容プログラムに加え、高さが調節可能な机を導入した群では63.7分/日、統計的にも有意に短いことが示されました。
論文著者らは、「高さが調節可能な机を導入することは、行動変容プログラムを単独で行うよりも座位時間を3倍減らす効果がある」と結論しています。
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