痛みのない暮らしを取り戻す

ひどい片頭痛や全身の倦怠感… 星状神経節ブロックで改善

写真はイメージ
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 抗がん剤治療では、吐き気や頭痛、全身の倦怠(けんたい)感など強い副作用に悩まされる患者さんが少なくありません。抗がん剤は、がん細胞をやっつけるために有効とされる治療ではありますが、患者さんのQOL(生活の質)を考えて、患者さんが最もつらいと感じている症状を取り除いてあげられるものならば、力を添えたいと考えています。

 晴子さん(仮名・現在68歳)は、HER2(3プラス)という少し予後が悪いタイプのステージ2Aの乳がんで、10年前に左乳房とリンパ節を手術で切除され、手術後は抗がん剤治療を受けていました。ただ、抗がん剤の副作用が大変つらく、それがなんとかならないかと、当クリニックに来られたのです。もともとあった頭痛もさらに悪化して、ひどい片頭痛となっていました。頭痛は交感神経の過緊張が原因で発生します。

 そこで、私は星状神経節ブロックを提案し、その上で漢方薬、糖質制限食、自律訓練法、音楽療法、気功、呼吸法、機能性食品などを組み合わせた治療法を提案しました。

 星状神経節ブロック療法は初回から反応が良く、片頭痛は和らぎ、痛みも和らいでいるというサインが出て、その後、月に1~2回の星状神経節ブロックを6年ほど続けました。

 乳がんの手術から6年後、晴子さんのマーカーは2まで低下し、PET検査でも異常なし。その後も経過観察を続けていましたが、4年前には腰部椎間板ヘルニア、一昨年前から肋間(ろっかん)神経痛があり、乳がんに多い骨転移のことも疑って今年8月に骨シンチグラフィーの検査を行ったところ、結果、骨転移の可能性はなしという診断でした。

 晴子さんに骨転移はありませんでしたが、骨転移した患者さんの骨の痛みに星状神経節ブロックを施したところ、骨の痛みが消失したという方もいます。

 痛みがなくなることでQOLが上がるだけでなく、さまざまな体調不良も改善されて、元気な生活に戻られる方も少なくありません。

 晴子さんの場合は全身の倦怠感や片頭痛があり、星状神経節ブロック治療に踏み切りましたが、倦怠感や頭痛だけでなく、全身的に症状が改善されていったといいます。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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