バイデン大統領が大麻所持で有罪になった約6500人を恩赦すると発表し、大きな反響を呼んでいます。
アメリカでは50州のうち、19の州とワシントンDC(コロンビア特別区)で大麻が完全に合法化され、37州で医療用の使用が認められています。非合法でも、持っているだけで売り買いしなければ犯罪にならない州もあり、完全に非合法の州はわずか4州です。
バイデン大統領は「こうした状況下で恩赦は当然」としていますが、今回の措置は大きく歓迎されている一方で、批判も受けています。
というのは、恩赦の対象になる人が著しく限られているからです。1992年から2021年の間に、連邦法とワシントンDC(コロンビア特別区)の法律により裁かれた人のみ。ところが大麻所持に関しては、各州の法律で裁かれた人の方が圧倒的に多いのです。
2010年から18年の間に、大麻所持で逮捕された人は全米で600万人もいますが、ほとんどが今回の恩赦の対象にはなりません。
大きな一歩と評価が高い一方で、失望する声も少なくありません。中間選挙を前に支持率を上げたいからだろうという、意地悪な意見も出ているほどです。
では、各州ではどんな措置が取られているのか?
例えばニューヨーク州では、2021年3月に大麻が完全に合法化されました。これに伴い過去に大麻所持で逮捕された人からは、犯罪歴が抹消されることになりました。しかし逮捕されて服役し、その後の困難な社会復帰に費やした時間を取り戻すことはできません。
特に問題視されているのは、大麻の使用率は白人も黒人も同じなのにかかわらず、大麻所持で逮捕されるのが圧倒的に黒人だということです。ニューヨーク州で2000年から18年の間に逮捕された90万人のうち、8割が黒人とヒスパニックだったことがわかっています。この傾向はどの州も似たりよったりで、アメリカが持つ制度的人種差別の最悪の例として、ブラック・ライブス・マター運動でも大きくクローズアップされました。
ニューヨーク州では今後、大麻販売店への許可証を発行するにあたって、過去に大麻で逮捕された人を優先する方針を決めています。
過去の犯罪歴を抹消する措置は、条件は少しずつ違いつつも約20州で進められています。対照的に、いまだ非合法な州では、逮捕され服役する人が絶えません。どの州に住むか、どの肌の色に生まれるかで運命が全く違ってしまう。アメリカの深刻な分断がここにもはっきりと見えています。
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