健康長寿のカギは腎臓にあり

腎機能が低下しても自覚症状なし 気づいた時には後戻りできない

写真はイメージ
写真はイメージ

 私たちの体に2つある腎臓には、左右それぞれに糸球体と尿細管のセットがあります。糸球体は、細い毛細血管が毛糸のように丸まっていることからその名前がつきました。また、尿細管は、原尿の通り道になります。

 このセットは「ネフロン」と呼ばれています。ネフロンは左右の腎臓それぞれに約100万個ずつあり、ここで老廃物をろ過して腎臓がきれいにする血液は1日に約150リットル。このように大量の血液をきれいにするほか、尿を作り、ホルモンを分泌し……と、腎臓は大忙し。しかし実はとても我慢強い臓器でもあります。

 腎機能が低下したとしても、自覚症状はほとんど出ません。そのため、徐々に悪化が進み、気づいたときにはもう後戻りできないところまで悪くなっていることが多い。腎臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんは、こういうところにあるんですね。

 老化や生活習慣などで少しずつ腎機能が低下した症状は、慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)と呼ばれ、ただちに命に関わるものではありません。しかし、決して放置していいものではなく、悪化すると病院で「人工透析」を受けなければならないことも。

 少し話はそれますが、私が腎臓に興味を持ったのは、研修医時代のことでした。大ヒットしたドラマの影響で救急医を志して上京しましたが、研修医として救命救急で当直に明け暮れる中、「患者さんが救急に運ばれる前段階で、もっとできることがあるんじゃないか」と感じるようになったのです。

 ドラマ化されるとカッコいいのは救命救急かもしれない。でもたとえドラマにはならないような一見地味と思えるようなテーマであっても、もっと考え、取り組まなければいけないことがあるはず。私にはそれが「予防医療」だと思えたんです。

 中でもなんとかしたいと強く感じたのは「人工透析」でした。日本国内で30万人を超えるといわれる透析患者を減らすためにも、腎臓を専門とし、腎臓の啓発活動・情報発信をする必要がある。誰かがこの領域をしっかりやれば必ず結果が出るはずだという思いに駆られ、「赤羽もり内科・腎臓内科クリニック」を開業しました。透析予防のための「早期発見の検査」や「重症化予防」に力を入れています。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

関連記事