風邪の自宅ケアでは要注意…子供に大人用の薬を飲ませてはいけない

大人用のものは子供には使ってはいけない成分が含まれているものも…(写真はイメージ)
大人用のものは子供には使ってはいけない成分が含まれているものも…(写真はイメージ)

 秋から冬にかけては急激な気温の低下などで風邪をひきやすくなる。とりわけ学校や幼稚園などで集団生活を送っている子供は風邪やインフルエンザといった感染症の原因になるさまざまなウイルスに感染しやすい。小児科にかかれない場合、自宅で薬を飲んで対処するケースがほとんどだが、子供に薬を使うときは注意が必要だ。長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長で、学校薬剤師も務めている荒川隆之氏に聞いた。

 いわゆる「風邪」の約90%はウイルスが原因だ。上気道にウイルスが感染することで炎症が起こり、発熱、喉の痛み、鼻水や鼻詰まり、咳、頭痛などさまざまな症状が現れる。原因はウイルスなので、細菌を殺す抗菌薬=抗生物質は効かない。さらに風邪を引き起こすウイルスは400種類以上といわれ特定するのが難しいこともあり、ウイルスを排除するような根本的な治療薬はない。そのため、症状に応じた対症療法が行われる。

「子供が風邪をひいたとき、まずは市販の総合感冒薬を服用させる人も多いでしょう。しかし、総合感冒薬には発熱、喉の痛み、鼻水、咳といった風邪のさまざまな症状に効く成分が多数混ざっています。ですから、たとえば発熱だけで咳や鼻水の症状が出ていない場合でも、必要のない余計な成分を一緒に摂取してしまうことになります。また、大人用の総合感冒薬の中には、子供には使ってはいけない成分が含まれているものもあるので、子供用がないからといって、大人用の薬の量を減らすなどして服用させるのも厳禁です」

 風邪によるひとつの症状に対してひとつの薬を用いるとしても、子供の場合は注意が必要だ。まずは熱を下げるために使う「解熱鎮痛薬」が該当する。

「解熱鎮痛薬には『NSAIDs』(エヌセイズ)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンやジクロフェナクなど)と、『アセトアミノフェン』(カロナールなど)の2種類があります。両者の大きな違いは炎症を抑える作用があるかないかで、NSAIDsは抗炎症作用があり、アセトアミノフェンにはほとんどありません。小児におけるウイルス疾患の解熱には、アセトアミノフェンが安心して使える薬です。水ぼうそうやインフルエンザの時に小児に対してアスピリンを使用した場合、急性脳症や肝臓の脂肪浸潤を引き起こすライ症候群の発症を高めることがわかっています。また、ジクロフェナクナトリウムなどの一部のNSAIDsは、インフルエンザ脳症発症時の死亡率を高めることが知られています」

■抗菌薬の中にも子供には使ってはいけないタイプが

 咳止めの中にも、子供に使う場合は注意すべきものがある。

「咳止め薬の代表的な成分のひとつに鎮咳薬の『コデイン』があります。咳中枢を抑えることで咳を止めます。ただ、コデインには呼吸しにくくなる副作用があり、長期使用による依存性も認められています。小児の事故も報告されていることもあって、2019年から12歳未満へのコデインの使用が規制されています。大人用の咳止めはもちろん、古いタイプの小児用の総合感冒薬の中にはコデインが含まれているものがあるため、しっかり確認したほうがいい」

 ウイルスによる風邪に抗菌薬=抗生物質は効かないが、細菌感染が疑われるケースや合併症、その予防に対して処方される場合がある。そうした抗菌薬の中にも子供には使ってはいけないタイプがある。

「風邪に合併した中耳炎、咽頭炎、鼻炎、呼吸器疾患などに対して、レボフロキサシンなどの『ニューキノロン系抗菌薬』や、ミノマイシンなどの『テトラサイクリン系抗菌薬』が広く使われています。ニューキノロン系の多くは、小児が服用すると関節障害や骨の発育不全を起こすリスクがあり、15歳未満の小児には使えません。また、テトラサイクリン系は8歳未満の小児に使うと、歯が黒っぽく変色する着色歯が生じたり、エナメル質の形成不全などを起こすことが知られています。そのため、8歳未満では原則として使用できません。これらの抗菌薬はよく効くこともあって、内科や耳鼻科で広く気軽に使われています。中には子供には禁忌であることを知らない医師が処方しているケースもあるので気を付けましょう。また、大人に処方されたこれらの抗菌薬を子供に分けて使うのは厳禁です」

 生体機能が発達途上な子供は、薬の吸収・分布・代謝・排泄が不安定で、薬によっては副作用が強く出たり、逆に効きすぎてしまうケースがある。大人用の薬はたとえ量を減らしたとしても使ってはいけない。

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