名医が答える病気と体の悩み

「認知症が回復した」というのは脳がどんな状態にあるのか?

薬によって著しい回復がみられることも(写真はイメージ)
薬によって著しい回復がみられることも(写真はイメージ)

 認知症には大きく分けて、4種類あるとされています。「アルツハイマー型認知症」を筆頭に「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」がそれに該当し、これらは不可逆的な認知症のため、一度進行してしまえば回復することはありません。

 一方、書籍や雑誌記事などで「認知症の奇跡の回復」「治し方」といった企画を目にします。周囲からも本当ですか? という声を聞きます。

 実は4種類の認知症以外で認知機能の低下が見られた患者さんなら、回復するケースがあります。脳の器質的な疾患が取り除かれて、認知症が急激に改善する場合があるからです。

 たとえば「正常圧水頭症」(脳に水がたまる病気)や「ウイルス性のヘルペス脳炎」を原因とした認知症です。脳に目に見える原因があって認知症に至った場合には、一度急激に認知機能低下の症状が出ますが、外科手術などによって原因が取り除かれると急速に回復します。ほかにも、うつ病が悪化して認知症のように見えることもあり、そのような場合はうつ病の治療を行えば、認知機能が回復するケースもあります。

 また、冒頭の4種類の認知症でも、レビー小体型認知症の患者さんの場合、「奇跡の回復」がみられるケースがあります。ただ、これは“錯覚”です。レビー小体型認知症では、脳内のドーパミンが不足し、手の震えや動作・歩行困難といったパーキンソン症状が認められます。体が動かせずに寝たきりになったり、会話ができなくなりますが、ドーパミン量を増やすパーキンソン病の治療薬「レボドパ製剤」を投与すると運動障害が改善するケースがあるのです。

 その際、認知機能自体は回復していないのですが、身体機能の著しい改善に「奇跡の回復」と感じられる患者さんやご家族は多いですね。

 いずれにしても、家族が認知症になったなと思ったら、まずは病院で精密検査をしてもらいましょう。早めに病院に付き添って、通院を開始してあげてください。

 水頭症の場合は、尿失禁・歩行障害が同時に起きることが多いです。“治る認知症”であっても、放置していると悪化してしまう可能性があります。

▽江越正敏(えごし・まさとし) 佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニックを開業。西洋医学から東洋医学にわたって世界中から集積した独自の短期集中型医療ダイエットを開発する。

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