自分の髪形や服装が変じゃないか気になる。あるいは、飲食店で誰かが自分のことを見ているのではないかとそわそわする。誰かの視線を意識してしまう──。そういった自意識過剰ともいえる「気にしすぎ」な一面を、誰もが持っているのではないでしょうか?
「スポットライト効果」という言葉があります。これは、自分の外見や行為に対して、他者が実際以上に関心を持っていると考える、自己中心的な偏見を指します。
コーネル大学のギロビッチは、学生たちを対象にスポットライト効果を確かめる、ある心理実験を行っています(1999年)。
まず、大多数の学生に、「こんなプリントのTシャツは恥ずかしくて着ていられない」と感じるTシャツ(一言で言えば誰が見ても変だと感じるダサいTシャツ)を着てもらいました。その後、学生集会に顔を出すようにお願いし、1分ほど滞在した後、会場を出てもらいました。学生たちは、当然のように恥ずかしいと感じたようで、逃げるように会場を後にしたといいます。
ところが、ギロビッチが学生集会で、「さきほど、ここに変なTシャツを着た人が来たことを覚えている人はいますか?」と質問すると、手を挙げたのは全体の24%にとどまっていました。誰が見ても変なTシャツを着ている人でさえ、4人に1人しか見ていないという結果が明らかになったのです。ものすごく目立つ服装でさえ、4人に1人しか気が付いていないのですから、普通にしているケースであれば、ほとんどの人が気付いていない。自分自身が気にしているだけであって、周りの人は、あなたが感じているようには感じていないというわけです。
また、心理学者のアラン・フェニングスタインが提唱した「自己標的バイアス」という心理学用語についても触れておきましょう(1979年)。
フェニングスタインは、50人のクラスメートを被験者に次のような実験を行いました。先生がテストを返却する際に、「みんなよくできていたが、1人だけできていない人がいた」と言ったところ、20%の生徒が「自分ではないか?」と不安に感じたそうです。50人中1人が該当することから、本来は2%のはずなのに、です。同じシチュエーションで、「隣の生徒がそうだと思うか?」と尋ねられ、「そう思う」と答えた生徒は8%だったといいます。
この質問だけでは、自分や隣の生徒のテストの出来をわかっていた可能性もありますから、念のため8人のグループをつくり、「この中の誰か1人にデモンストレーションをしてもらう」という別のケースでも試してみたそうです。
誰か1人が選ばれる──。そうした状況において、誰が選ばれるかを8人に聞いたところ、不思議なことに、他7人が選ばれる確率よりも、自分が選ばれると答えた人の方が多かったのです。このように「自分ではないか?」と過剰に思うのも、「自己標的バイアス」によるものです。
人間は、どうしても自分が気になってしまう生き物です。しかし、それはバイアスであって、周りは必ずしもそうだとは思っていない。自分に対する過度な偏見は捨てること。周りは、あなたが思っている以上に、あなたを見ていないのですから。
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