血液サラサラ薬を飲んでいるなら、ちょっとした頭の打撲も要注意 すぐにCTで検査をと医師

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 超高齢化社会の日本で患者数が多いのが、加齢がリスク因子となる脳梗塞や心筋梗塞だ。治療として、血液をサラサラにする抗血栓薬を使用することになるため、脳梗塞や心筋梗塞が増えれば、必然と抗血栓薬を服用する人も増える。適切な使い方を念頭に置いておかねばならない。

「抗血栓薬はメリットもありますが、デメリットもあります。うまく天秤にかけながら使わなければなりません」

 こう言うのは、国際医療福祉大学成田病院脳神経外科の末廣栄一医師。メリットは、血液の塊である血栓をできにくくし、脳梗塞や心筋梗塞を予防する。一方、デメリットはケガや脳出血などで血が止まりにくくなることだ。

「抗血栓薬を服用している患者さんでは、軽症の頭部外傷でも脳内出血の率が高くなります。ちょっとした頭の打撲でも脳内出血に至ることがありますし、ベッドから転落し、頭自体は打っていないが遠心力で脳内出血となった例もありました」 

 末廣医師によると、頭部外傷というと、かつては「交通事故に遭った若者が多い」という時代があったが、今は80代が最も多いという。

「それも大半が自宅での転倒です」

 ただでさえ高齢者の転倒は寝たきりにつながりかねないのに、抗血栓薬服用の人が転倒による頭部外傷で脳内出血を起こしたら、寝たきりはおろか、そのまま死に至る可能性がある。

「さらに抗血栓薬を服用している人は、『トーク(話す)&デテリオレイト(悪化する)』も有意に多い。これは、転倒した直後は元気で話もできているのに、しばらくすると意識障害や麻痺が出て昏睡状態になっていく現象です」

 抗血栓薬を服用している人が押さえておくべき点は次の3つだ。

【軽く頭を打っただけでもすぐに病院へ行く】

 前述の通り、「トーク&デテリオレイト」が起こりうることも考えられるので、なんともなくても脳神経内科や脳神経外科がある病院をすぐに受診し、CTで脳内出血がないかを調べてもらう。

【転倒しないようにする】

 転倒原因として、筋力やバランスの低下に加え、視力・視野障害(段差などを認識しづらい)、足首の関節の硬さ(大きく踏み出せず姿勢の立て直しが困難)、靴の問題(歩きづらく転倒しやすい)もある。

 飲んでいる薬によっては、副作用でめまいやふらつきが現れることもある。

 自宅内での転倒を防ぐには、住環境を整える必要もある。

【お薬手帳を常時携帯する】

 抗血栓薬服用時の出血性合併症に対する有効な治療のひとつとして、中和療法がある。

「中和剤の投与で、抗血栓薬の活性を抑制し、出血性合併症による障害を抑えます」

 中和剤には種類が複数ある。どの抗血栓薬を飲んでいるかで、使う中和剤が異なる。ここが中和療法が難しい点になる。抗血栓薬もさまざまな種類があるからだ。

「救急搬送された患者さんの服用薬剤がわかるのは、半数ほどが搬送された翌日です。しかし、中和療法はすぐに行わないと効果がない。どの抗血栓薬を飲んでいるかがわからなければ、中和療法を含めた適切な対応ができません」

 抗血栓薬を服用しているある80代の患者は10時半に自宅で転倒。ドクターヘリを要請し、大学病院で15時43分に中和療法が行われたが、すでに遅く、意識の戻らない状態となってしまった。

「頭を打ち脳内出血があると、血腫が大きくなり脳ヘルニアという治療しても元に戻すのが難しい状態になります。抗血栓薬を飲んでいる人は血腫が大きくなる前に、早い時期に、中和療法が必要なのです」

 お薬手帳を持っていれば、そこに服用している薬が明記されている。残念ながら中和療法は専門的な知識が必要なため、どの医療機関でも行っているわけではないが、もし中和療法を行っている病院であれば、本人の意識がなくても、お薬手帳を確認して中和療法を速やかに行える。いつ転倒するかわからないので、常時携帯すべきだ。

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