名医が答える病気と体の悩み

認知症の家族の「特養」への入居待ち期間はどう過ごせばいい?

ショートステイも上手に活用する(C)PIXTA
ショートステイも上手に活用する(C)PIXTA

 自宅介護ができなくなった認知症の家族の入居先として最も人気なのが、「特別養護老人ホーム」(特養)です。国や自治体の補助金によって設立されていることから、入居一時金や初期費用がかからないなど比較的安価で利用できるためです。特養の場合、入居の基準は要介護3以上の身体介護や日常的な生活支援を必要とする患者さんが優先で、緊急度や経済状況によって異なります。しかし同じ条件なら、基本的には、ほかの医療機関に長期入院することによる退去か、終身利用のため、入居者が亡くなって空きがでないと待機者が入ることはできません。そのため申し込みをしても、半年から数年以上順番待ちをするケースは珍しくありません。

 それでは自宅介護できる状況ではないが、特養の入居待ちの認知症患者さんの家族はどうすれば良いのでしょうか。

 ひとつはショートステイの活用です。特養をはじめ、病気やケガなどでリハビリが必要な高齢者が利用する「介護老人保健施設」(老健)では自宅介護の方が利用できるショートステイのサービスを行っています。受け入れてくれる施設は多く、一般的に1日から1カ月程度の滞在が可能です。1カ月利用してから、数週間ほど自宅で介護し、またショートステイを利用する方もいます。65歳以上で要介護または要支援の認定なら利用できます。要介護3で介護負担1割の方の場合、特養で1日700~800円台、老健で1日800~900円台(いずれも食費・居住費除く)が目安です。

 待機期間の“抜け道”として多いのが、老健を活用するケースです。要介護高齢者(要介護1以上)が対象で、認知症の患者さんでも、自身で身の回りのことができる方でも利用できます。ケガや病気の回復のためのリハビリや食事、入浴などのサービスも行ってくれます。在宅復帰を目指す施設のため、原則として入居期間は3カ月。平均滞在期間は半年から1年程度です。

 老健はリハビリが専門のため特養よりも医療・介護サービスが充実しているので、価格は高くなりますが、公的施設なので入所一時金はありません。介護保険が適用されるので、自己負担額は原則1割。月額費用は要介護度や部屋のタイプによって異なり、多床室なら月平均約8万~9万円、従来型個室なら同約11万~12万円程度が目安です。老健ならショートステイよりも長期間滞在できますし、退去後、1週間から数週間以上の自宅介護を経て、老健に再入居。このパターンを繰り返して、特養の順番を待っているご家族もいます。

 ほかに有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅といった民間施設であれば、すぐに入居先が見つかります。もちろん、特養が見つかるまで長期間の滞在が可能ですが、経済的な負担が大きいので、“抜け道”を検討するケースが多いといえます。

▽森川髙司(もりかわ・たかし) 奈良県立医科大学卒業、奈良県立医科大学付属病院で臨床研修医(第2内科)。その後、吉野病院、田北病院内科医長、向山病院副院長などを経て、兵庫県尼崎市に医療法人煌仁会 森川内科クリニックを設立。現在、産業医や校医も務める。

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