認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

酒を飲む人、少し飲む人、飲まない人…認知症になりにくいのは?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナで静かになっていた飲食店街も、最近賑やかさを取り戻していますね。今年こそは忘年会を、と思っている人もいるのではないでしょうか。そんな気持ちに水を差すわけではないですが、アルコールと認知症について取り上げたいと思います。

「人生取るか、酒取るか。これで10年後が全然違う」──。外来で私がよく口にする言葉です。体に害を及ぼすものとしてよくたばこが取り上げられますが、脳に限って言うと、アルコールはたばこより害。

 たばこはがん、心臓病や脳卒中などの循環器疾患、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)をはじめとする呼吸器疾患のリスクを上げます。喫煙者は認知症になりやすいといわれるのは、たばこに含まれる有害物質が血管を傷つけ、生活習慣病を悪化させるから。脳に間接的に悪影響を与えるのがたばこです。

 一方、アルコールはダイレクトに脳に影響します。精神活動を活発にする大切な物質として、アセチルコリンがあります。アルコールはアセチルコリンの働きを低下させ、記憶系を障害するという結果が動物実験で出ています。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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