コロナ第8波を乗り切るために…年末年始は「空気感染対策」をあらためて見直したい

ワクチン接種を受ける尾身茂会長(代表撮影)
ワクチン接種を受ける尾身茂会長(代表撮影)

「第8波」に突入した新型コロナウイルスの感染が拡大し、年末年始にかけてのさらなる感染者増加も懸念されている。現在の主流であるオミクロン株「BA.5」や新たな「BQ.1.1」は、重症化率は低いとされているが、感染者が増加すれば重症者や死亡者も増えるし、医療機関の逼迫も深刻になりつつある。そんないまだからこそ感染予防策を見直したい。あらためて徹底すべきは「空気感染対策」だという。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。

 12月に入り、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長が新型コロナに感染したことが公表された。尾身会長はすでに5回目のワクチン接種を済ませていたというから、重症化を防げるとしても、感染予防効果は期待できそうにない。となると、これまで実施してきたマスク着用や手洗いをあらためて徹底することが大切だが、より警戒すべきは「空気感染」だという。

「新型コロナの感染経路は、『接触』や『飛沫』であることはたしかです。しかしそれ以上に、換気の悪い混雑した屋内環境での『空気感染(飛沫核感染)』が主な感染ルートだということが、パンデミックが始まった当初から指摘されていました。会話などで口から排出された飛沫が空気中で乾燥して飛沫核(エアロゾル)という微粒子となり、数メートル以上にわたり空中を漂って、鼻や口から吸い込んだ人に感染するのです」

 新型コロナが空気感染することは、2020年2月に中国で報告され、7月ごろには「サイエンス」や「ランセット」などの世界トップレベルの医科学誌に相次いで論文が発表された。米CDC(疾病対策センター)やWHO(世界保健機関)は21年春に空気感染を認め、同年末には日本の厚労省も公的に認めるようになった。だが、いまだに広く十分に認識されているとはいえない状況だ。

「不織布マスクの着用はある程度の飛沫を防げますが、感染対策として十分とはいえません。これまで報告された国内外の感染事例を見ると、ごく近くにいて大声で話した場合、マスクの有無にかかわらず、1分以内に感染する可能性があります。東大医科学研究所の研究では、不織布マスクをしている場合、50センチ離れている条件では、飛沫や飛沫核によって侵入するウイルス量は47%程度しか減らせませんでした。換気が悪い室内では、たとえ人と人の距離を1メートル以上あけても、飛沫核が室内を循環するため感染リスクが高くなるのです」

■空気清浄機やCO2測定器を活用

 空気が乾燥する冬は、ウイルスを含んだ飛沫核がより細かい粒子となって長時間漂うため、さらに空気感染のリスクがアップする。マスクだけでは予防できないと認識し、室内を漂う飛沫核を屋外に排出するためにあらためて「換気」を見直すべきだという。

「定期的に室内の空気を循環させて“たまり場”をつくらないことが重要です。理想は窓を開けっ放しにしておく常時換気ですが、気温が低い冬ではなかなか難しい。WHOや米CDCの報告では、換気が1時間に2回以下になると、ウイルスの拡散に有意な関連があるとしています。ですから、換気は最低でも1時間に2回以上の頻度で行うようにします」

 換気をする際のポイントは、空気の通り道をつくることを意識する。1カ所だけではなく、対角線上にある窓やドアを1カ所ずつ開けるようにすれば、開ける幅が5~10センチ程度でも十分に換気できる。

「窓やドアが1カ所しかない部屋などでは、外気を取り入れながら空気清浄機や扇風機を使って換気を補助するのも効果的です。空気の流れが悪くエアロゾルの発生が多いエリアに設置するのが基本です。また、市販されている空気清浄機の多くで使われているHEPAフィルターは、35.5分で99.97%のエアロゾルを除去することがわかっています。窓がない場合でも一定の効果が見込めます」

 飲食店やオフィスなど人が多く集まる場所では、しっかり換気できているかどうかの指標になる二酸化炭素濃度測定器(CO2測定器)を活用したい。

「エアロゾルが浮遊する室内で感染を予防するために必要な換気量は、1人あたり30立方メートル/毎時以上、CO2濃度は1000ppm以下を確保することが目安とされています。以前は飲食店などに設置してあるCO2測定器を目にしましたが、最近は減っている印象があるので、あらためて活用を検討すべきと考えます」

 換気をさらに徹底して、第8波を乗り切りたい。

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