感染症別 正しいクスリの使い方

【帯状疱疹】ワクチンは発症を完全には防げないが症状が軽く済む

写真はイメージ
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 このところ、帯状疱疹ワクチンを希望される方が増えていて、説明をする機会も多くなっています。帯状疱疹については以前にもお話ししましたが、今回はワクチンを取り上げます。

 帯状疱疹は日本人の3人に1人が80歳になるまでに経験すると推定されていて、患者の約7割が50歳以上です。多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えるのですが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼んでいます。帯状疱疹の発症率は加齢に伴って増加し、PHNへの移行リスクも加齢とともに高くなるといわれています。50歳以上の患者さんの約2割が移行するという報告もあります。

 ワクチンは帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、たとえ発症しても症状が軽く済むと報告されています。帯状疱疹ワクチンには、2016年に認可された「弱毒生水痘ワクチン」と、2020年に認可された「シングリックス」の2種類があります。いずれのワクチンも対象年齢は50歳以上とされています。

 弱毒生水痘ワクチンとは、弱毒化された生きたウイルスが含まれている生ワクチンで、小児に使用する水痘ワクチンと同じものです。一方、シングリックスは帯状疱疹を予防するために開発され、ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組み換えワクチンで、生ワクチンではありません。

 シングリックスの特徴は、帯状疱疹の発症予防効果、PHN予防効果の高さ、筋肉注射であること、効果持続期間が10年程度と長いことが挙げられます。ただ、1回約2万2000円を2回接種と非常に高価であること、筋肉痛や頭痛など全身性の副作用の頻度が高いことが欠点となります。

 一方、弱毒生水痘ワクチンは皮下注射の1回だけで終了となります。全身性の副作用が少なく、8000~9000円程度とシングリックスより安価であることも利点です。しかし、効果の持続期間は約5年と短く、生ワクチンであるため妊婦や免疫が弱っている方には接種できません。

 どちらも一長一短がありますので、詳しくは医師や薬剤師に確認するとよいでしょう。また、まだまだ少ないのですが、帯状疱疹ワクチンの補助金を出してくれる自治体も増えてきています。接種を希望する方は、自分が住んでいる自治体に確認してみてください。

荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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