名医が答える病気と体の悩み

認知症の親が暴力…施設から退所を促されたらどうすればいい?

写真はイメージ
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 認知症の患者さんが大声を出したり、暴力や徘徊(はいかい)といった症状の悪化で、預け先の施設から退所を促されるケースがあります。

 もし、預け先の施設から連絡を受けたら、まずは患者さんが親しくしていた担当者の勤務シフトが変更になるなど、本人の生活環境に変化がなかったかどうかを確認しましょう。

 高齢者施設では、身近なお世話をしてくれる方が担当替えになると過敏に反応する患者さんが少なくありません。認知症の進行ではなく、状況に戸惑って一時的に言動が荒くなり、症状の悪化と勘違いされるケースがあるのです。その場合、施設と滞在継続を話し合う余地があります。

 しかし、そういった特殊事情がなく、認知症の周辺症状が悪化したことによる行動変化だとすれば、患者さんの状況に合った施設を検討するタイミングとなります。

 ご家族は次の順番で相談しましょう。

(1)地域包括支援センターという介護や医療のワンストップ窓口で今後の流れを相談する(2)かかりつけ医に連絡して状況を伝え、アドバイスをもらう(3)①で紹介してもらった施設(病院)に常駐する医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーから、入居できそうな施設の情報を入手する。以前、在住していた施設で患者さんがリハビリや食事など、どのようなメニューを受けていたかを伝え、生活に合った施設を探してもらう。

 ただ、該当する施設が見つかったとしても、すぐに入居するのは難しいケースが多い。

 その場合、次の3つの選択肢の中から対応を検討するといいでしょう。

(1)緊急時に利用できる「緊急ショートステイ」の活用(行政によって対応の有無があるため、生活圏の自治体に要確認)(2)デイサービスを軸に訪問介護とショートステイ(泊まり)を組み合わせた施設「小規模多機能型居宅介護」への入居(2~3日に1度、自宅で介護するイメージです)(3)賃貸住宅で必要なサービスのみ個別契約できる「サービス付き高齢者向け住宅」への入居(看護師さんが常駐していますし、都内なら入居費用は月20万~30万円程度が目安です)。

 これらを一時的に利用しながら、患者さんの状況にマッチした施設への入居を待ちましょう。

▽櫻澤博文(さくらざわ・ひろふみ) 健幸経営支援型産業医、労働衛生コンサルタント、医学博士。産業医科大学卒業後、京都大学大学院で社会健康医学修士号取得。著書に「『メンタル産業医』入門」(日本医事新報社)他多数。健康問題に関する講演会講師として人気が高い。

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