最近、「肺MAC症」という感染症が増加しているといわれています。マックといえば何を思い浮かべますでしょうか。アップルのコンピューターやハンバーガーチェーン店を連想する人が多いかもしれません。
感染症領域におけるMACとは「Mycobacterium avium-intracellulare complex」の略で、結核菌と同じ抗酸菌グループの細菌を指します。西日本にはintracellulare菌が多く、東日本にはavium菌が多いといわれていますが、性状がよく似ているため一括してMACと呼ばれています。結核菌と同じ抗酸菌のグループだけど、結核菌ではない。ということで「非結核性抗酸菌」などとも呼ばれます。
この菌は環境中に存在していて、バスタブ、給湯やシャワーヘッドなどの入浴施設、庭園の土との接触が発症に関係しているとの報告が多くあります。そうした場所で、しぶきや霧状の水滴、土ぼこりなどが発生し、その中のMAC菌を肺に吸い込むことにより感染すると考えられています。結核菌とは異なり、ヒトからヒトへは感染しないので、この点は安心です。
肺MAC症とは、非結核性抗酸菌による肺の慢性感染症です。結核菌と同じ仲間なだけあって、その症状や治療法も肺結核と似ています。症状がなく、健診や人間ドックでの胸部画像検査で発見されることもしばしばあります。肺結核と同様に咳や喀痰が主な症状ですが、10年以上かけてゆっくりと進行し、血痰、全身倦怠感、体重減少を来すこともあります。
治療をしなくても痰から菌が検出されなくなったり、何年もレントゲンの影が変化しない患者さんもいます。しかし、画像検査で病変が広く進んでいく場合には、抗菌薬治療を行うケースもあります。治療法は結核の治療と同じように、クラリスロマイシン、エタンブトール、リファンピシンの3種の抗菌薬内服による多剤併用療法が標準治療で、1年以上の長期にわたって薬を飲むことが必要となってしまいます。
普段から菌がつきやすい水回りやシャワーヘッドなどは定期的に掃除をしましょう。
感染症別 正しいクスリの使い方