健康長寿のカギは腎臓にあり

「腹膜透析」自宅で受けられるが、日本では選択者が少ない

写真はイメージ(C)iStock
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「慢性腎臓病です」と医師から言われた場合、多くの患者さんの頭をよぎるのが「人工透析を受けなければならない」という思いではないでしょうか。

 慢性腎臓病(CKD)は慢性的に腎臓の機能が低下してなる病気で、その患者数は国内で1300万人を超えるといわれており、成人のおよそ8人に1人の割合となります。

 ただ、「CKD=人工透析」ではありません。CKDにはステージがあり、CKDの患者さんで実際に透析をしている人は全体の2~3%。診断されたからといって、すぐに人工透析治療となるわけではないのです。

 では人工透析とは、いったいどんな治療なのか。方法として現在多く選択されているのは2種類。血液透析と腹膜透析です。

 それぞれ簡単に説明していきましょう。

 まず、血液透析の仕組みから。体の中から自身の血液を抜いて、専用の機械でその血液をきれいにし、また体内に戻すという治療です。

 もう少し詳しく説明すると、自身の腎臓の代わりに人工腎臓の「ダイアライザー」と呼ばれるろ過装置を介して、血液から老廃物や余分な水分を取り除く。それが血液透析です。

 食事をしたり飲み物を飲むと、体内に余分な水分やミネラルがたまっていく。腎臓がきちんと機能していれば、これらは尿と共に体外に排出されるのですが、腎臓機能の低下が起こると蓄積されていく一方になります。 そのため、自身の腎臓の代わりに、ダイアライザーの力を借りるということです。血液透析は1回で3~4時間の治療時間が必要で、週に3回病院に通って透析を行うことになります。

 次に、腹膜透析について。こちらは「病院ではなく、家で治療を行いたい」という患者さんや、心臓病などの持病があって血液透析が難しい患者さん、そのほか何らかの理由があって週3回病院に通うことができない患者さんに行う治療となります。

 お腹の中に透析液を注入し、自分の腹膜を使って血液をきれいにする方法で、自宅や職場などでも自分で行うことができるのがメリットです。逆に自分で管理する負担は血液透析より大きくなります。日本でこの腹膜透析を選択している患者さんは、全透析患者の3%程度といわれています。

 在宅で行えるというメリットがあるものの、日本ではこの方法を選択する患者さんは少ないんですね。ちなみに海外では、もっと多くの患者さんが腹膜透析を選択されています。

 日本では「病院に任せたい」と考える患者さんが多いなどさまざまな原因が重なり、血液透析が多く選択されています。

 次回も引き続き人工透析についてお話ししたいと思います。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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