えんどう豆の若葉と茎を食べる豆苗は、スプラウト(新芽)の仲間です。豆苗はもともと中国では希少野菜として扱われていました。1970年代、日中国交回復以降に日本に入ってきた比較的新しい野菜ですが、それでも当時は高級中華料理店でしか扱われておらず、なかなか馴染みがなかったようです。
その後、90年代半ばから水耕栽培による生産がなされたことで、安定して収穫できるようになりました。最近ではお手頃な価格、何度も芽を出す栽培しやすさや楽しさ、健康効果の波及も相まって、食卓にあがる機会が増えた方も多いのではないでしょうか。
そんな豆苗はえんどう豆としての側面と新芽としての側面を持つため、野菜なのにタンパク質が豊富だったり、豆なのにビタミン類が豊富だったり、まさに一石二鳥! 「豆でありながら緑黄色野菜」という多面性を持った食材なのです。
たとえば、発がん作用や動脈硬化の予防に役立つことが知られているβカロテンと抗酸化力の強いビタミンCは小松菜とほぼ同じ程度含まれていますし、ビタミンCに関しては同量の温州みかんのなんと1.2倍も含まれているのです。
胎児の成長に大量に必要とされ、妊娠前後の女性に取っていただきたい葉酸も多く含まれています。
食事摂取基準によると、普段の必要量の約1.7倍、摂取する必要があると言われていますから、ぜひ積極的に取りたいですね。年代や性別によっても若干は異なってきますが、およそ50グラムの豆苗で1日に必要な葉酸量の7割以上を充足することができるので、効率的な摂取源と言えるでしょう。
さらに着目したいビタミンKは、丈夫な骨づくりに必要不可欠な栄養素。骨に存在するオステオカルシンというタンパク質に働きかけて、カルシウムを骨に沈着させる作用があります。およそ50グラムで女性が1日に必要なビタミンKを補えてしまいます。骨粗しょう症が進みやすい更年期以降の女性におすすめです。
別の視点からは、朝型の方が朝食にビタミンKを豊富に食べていることもわかったので、因果関係は定かではないものの朝食に喫食する試みもおすすめ!
βカロテンやビタミンKは脂に溶けやすい性質を持ちますので、油炒めやオイルドレッシングなどをかけると吸収率が高まります。特に夜は脂質の代謝が低下するので、そういった意味でも朝から昼にかけて日中の摂取がよいでしょう。
時間栄養学と旬の食材