前回、人工透析には血液透析と腹膜透析があることをお話ししました。今回は2つのうち、血液透析について、詳しく説明したいと思います。
日本の透析患者さんは、圧倒的に血液透析の方が多いのが実情。病院に通いさえすれば、あとは医療従事者に任せられるので安心感があるのかもしれませんね。
血液透析は、人工腎臓の「ダイアライザー」と呼ばれるフィルターを介して、血液から老廃物や余分な水分を取り除き、きれいにして自分の体に戻す方法。1回で3~4時間の治療時間が必要で、週に3回病院に通って透析を行います。
血液透析を受けることになったら、血液量確保のために「内シャント」と呼ばれる血管を作る手術が必要となります。血液透析では1分間に約200ミリリットルの自身の血液をダイアライザーに循環させる必要があるためで、必ず行わなければならない手術です。
手首近くの腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて血管を太くする手術で、局所麻酔で2時間前後で終了します。
内シャントが作製されてから、実際に使えるようになるまで約1カ月ぐらいかかります。
なお内シャント作製後は、作った方の腕で重いものやカバンを持たない、シャントがある腕をぶつけないなど日常生活でいくつか注意するべき点があります。
患者さんから「血液透析中は気分が悪くなるって本当ですか」という質問を受けることがあります。人によりますが、なりやすい方はいます。原因は、血液透析中の血圧低下にあります。
「血液透析をすると、顔色が黒くなる?」というのも、よく聞かれる質問。この答えはノーです。
30~40年ほど前の透析患者さんは、「黒くなる」ことがありました。腎機能が低下しているため、腎臓から作られる血液を作るホルモンが低下しており貧血に陥りやすい。そのため、輸血を行うことが多く、その作用で顔色が黒ずんでしまうことがあったのです。
しかし、現在では輸血を行わず、貧血を治療するホルモン薬などで対応できるようになりましたので、顔色が黒くなることはありません。
血液透析は週3回病院に通うので、ほかの患者さんと顔なじみになり、自然とコミュニケーションが発生します。
もちろん、透析にならないに越したことはありませんが、一方で励まし合ったり、情報交換をすることで、病気と闘う上での不安や孤独感が和らぐという側面があるのは事実です。
これは患者さんの心にはとても大きなメリットとなると言えるかもしれません。