健康の「素朴な疑問」

「泣く」ことで得られる健康効果 「笑う門には福来たる」というが…

ストレス解消に(C)iStock
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【Q】40歳男性です。涙と健康について質問です。よく「笑う門には福来たる」と言います。笑いは人間関係の潤滑油のようなもので健康にも良いと聞きます。実際、ユーモアのある人と接すると睡眠の質が向上したり、不安症状が改善したりするとの話も聞きます。また、よく笑う人は心臓病や脳卒中などが少ないという話もあるとか。では、泣くことと健康にはどんな関係があるのでしょう?

【A】泣くことは、笑いと同じように健康に良いと言えます。涙は大きく3つの種類があります。目を潤すための「基礎分泌による涙」、ゴミが目に入ったときなどに出る「反射性の涙」、脳にストレスがかかったときに出る「情動の涙」です。

 その成分は微妙に異なるといわれています。基本的には涙には酸素や栄養素が含まれています。目の表面の細胞には血管がないためです。また、細菌感染予防のためにリゾチームと呼ばれる物質が含まれています。これは、細菌を保護している膜を攻撃する酵素です。さらに、目の表面の傷を治す成分などが含まれています。

 タマネギを切ったり、ゴミや煙が目に入ったり、強い光を見たときに分泌される反射性の涙は三叉神経と呼ばれる目や顔などにある神経や視神経への刺激を受けると、脳内の涙腺核を通して副交感神経を経て涙腺から涙が出ます。目の表面の傷を治すための物質が多く含まれています。

 情動の涙は脳の中の前頭葉皮質が刺激されて出る涙です。このときコルチゾールといったストレス物質を低下させる作用があるとされています。つまり、感極まって流す涙にはストレスを解消する働きがあるというわけです。

 泣くことはストレスによって生じる苦痛を和らげる「エンドルフィン」やそれと似た物質を増加させる一方で、人の攻撃性や怒りっぽさ、不安に関連するとされる体内の余分なマンガンを体外に排出することで気持ちを落ち着かせる効果もあるとされています。

 新型コロナ禍で涙もろくなった、という人を聞きますが、知らず知らずのうちにストレスをため込み、涙で解消しているのかもしれません。

(弘邦医院・林雅之院長)

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