新型コロナを終わらせろ

コロナ禍で弱くなる子供たち 無気力・不安での不登校が増加

心の変化が…(写真はイメージ)
心の変化が…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症による国内最初の死者は神奈川県に住む80代の日本人女性だった。2020年1月22日に体調が悪くなり、2月1日に肺炎と診断され入院。新型コロナ感染が判明した翌13日に亡くなった。それから3年が過ぎた。23年2月24日時点で累積で3315万7721人が感染し、7万2134人が亡くなっている。

 この間、政府は莫大な予算を投じ、ウイルスの拡散を抑え込むことに躍起になってきたが、本来最も配慮され守られるべき立場にありながら、本気で顧みられずにきたのが子供たちだ。多くの子供たちの生きる力が弱くなっている。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「もともと近年不登校の子供たちは増える傾向にありましたが、新型コロナ禍で拍車がかかっている気がします。私は多くの学校でコロナ対策の講演を行っていますが、教員の方から『子供たちの生きる力が弱くなったと感じている』という声を数多く聞きます。何か嫌なことや気が向かないことがあるとコロナ感染が怖いから学校を休む、という子供が増え、親もそれに同意して、その結果、自分自身の殻に閉じこもる子供が増えているというのです」

 実際、2021年度の1年間で学校を30日以上欠席した不登校の小・中学生の数は24万4940人(在校生の2.57%)。これは文部科学省が公表した「問題行動・不登校調査」によるもので、20年度より4万8813人多く、過去最多だった。ちなみに、新型コロナの影響がなかった18年度での不登校の小・中学生の数は16万4528人(在校生の1.69%)だった。

 1年間で30日以上休んだ子供の中には経済的問題など不登校以外の理由もあるが、「新型コロナ感染回避」を理由に休んだ小・中学生は20年度は2万905人、21年度は5万9316人いた。その結果、小・中学生全体で20年度は28万7747人、21年度は41万3750人が学校を30日以上休んでいる。 

■本心は他人に明かせない

「気になるのは、『不安・無気力』を不登校の理由にしている子供たちが急増していることです。19年度の7万2398人(不登校全体の39.9%)から21年度には12万1796人(同49.7%)となった。これは多感な3年間を抑圧された状態で過ごした副作用の表れであり、今後さらに増加していくのではないか、と懸念しています」

 岩室医師が講演で回ったある中学校では、生徒に今後のマスクの着脱についてアンケート調査を実施したところ、「マスクは外さない」と「どちらとも言えない」がそれぞれ半数いて、「外す」と答えた生徒はほとんどいなかったという。

「学校に通っている子供たちはマスクを外して表情から心の内を周囲に知られるのは恥ずかしいという思いが強く、家族にしか素顔を見せない子供が普通になっています。これは他人に本心を明かせない、ということを意味しており、人と信頼関係を築くことが難しくなった世代が誕生しているということです。将来が心配です」

 重症化リスクの高い人にコロナ対策は必要だ。

 しかし、それ以外の人については感染予防一辺倒ではなく、社会全体を考えて行うことが必要ではないか。

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