科学が証明!ストレス解消法

「やるぞ!」より「やれるかな?」の方が良い結果を残せる

いったん脳内再生し、自問自答してみると…
いったん脳内再生し、自問自答してみると…

 当連載で以前、「独り言」が自己コントロールに役立つことを紹介しました。頭の中で独り言をつぶやく、すなわち「自身の行動を言葉にして、自問自答する」だけで、衝動的に選びやすい選択肢を誤って選ぶ確率が下がる効果があると判明したわけですが、もうひとつ覚えておいてほしいことがあります。

 それは、何かをするときに、「やるぞ!」と気合を入れるより、「やれるかな?」と自問して始めた方が良い結果を残すということです。

 イリノイ大学アーバナシャンペイン校のセネイらは、次のような興味深い研究(2010年)を行っています。

 実験では、53人の被験者を対象に、ランダムに並べられたアルファベットを入れ替え、異なる単語を10個作り出すというアナグラム課題を行ってもらいました。

 その際、事前に「I Will」と「Will I」、双方を紙に書き出して自分に言い聞かせるセルフトークをしてから臨んでもらいました。結果、「Will I」のほうが「I Will」に比べて70%も正解率が高く、モチベーションも上がる傾向があったのです。

 ちなみに、「I Will」「Will I」に加え、「I」(「意思」を意味するWillを取って、“私”だけにするパターン)と、「Will」(主語である「私」を取るパターン)のパターンでも調べたのですが、疑問形である「Will I」のみ明らかに結果が良かった──。

 つまり、目標に向かっていくときは、質問による自己対話が重要になるのです。

 なぜこのような違いが生じるのか? セネイらは、疑問文というのはその性質上、「可能性」と「選択の自由」を与えるので、より自律的に、かつ「やりたいからやる」という内発的な動機付けの感情を高めるためだと説明しています。

 どれだけポジティブなことを口にしても、はたまた「やろう!」と意気込んでも、自分で決める心の自由がある方が、人は伸びやかに活動できる。だからこそ、「○○する!」ではなく、「○○するかな?」と問いかけると効果的です。

 もし、あなたが仕事の資料を作成しなければいけないときは、「絶対に良いものを作るぞ!」と前のめりで考えるよりも、「期日までに果たして良い資料を完成できるだろうか」と考えた方が、脳のエンジンは働きやすくなる。実際問題として、後者の方があらゆるケースを想定するため、よりしっかりとした資料を完成できそうだと思いませんか?

 理性を働かせるためには言語の力が必須です。衝動的に、無計画に進めるよりも、いま自分がやろうとしていること、発言しようとしていることを、いったん脳内再生し、自問自答してみると頭の交通整理がしやすくなります。何事も力んでしまってはうまくいきません。自分自身を良い意味で疑ってみること。それも効果的なセルフコントロール術なのです。


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堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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