9人に1人が乳がんを罹患 10年生存率をほぼ100%を可能にするポイント

マンモだけでは不十分(写真はイメージ)
マンモだけでは不十分(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 30~64歳の女性のがん死亡数1位が乳がんだ。40歳以上から急増し、働き盛りや子育て真っ最中の世代もかかる。

「乳がんは10年前は20人に1人が発症する病気でしたが、今の罹患率は9人に1人。身近な人がかかったため不安で、と乳がん検診を受けに来る女性も増えています」

 こう話すのは「品川ブレストクリニック」の嶋本裕院長。

 どのがんでも早期発見、早期治療が生存率を高めるが、乳がんの場合、極めて早期であるステージ0で発見されれば、5年生存率どころか10年生存率もほぼ100%。

 しかし、ほかの臓器への遠隔転移があるステージⅣでは、5年生存率は38.7%、10年生存率は19.4%まで下がる。

「早期発見は、症状が出てからでは遅い場合がある。乳がん検診は無症状の方が受けるもので、症状が出る前に発見することが大事です」(嶋本院長=以下同)

 国は40歳以上の女性に乳がん検診を推奨している。それ以下の年齢なら、受けなくてもいい?

「患者さんの大半が40歳以上で発症しています。ただ、20~30代でも患者さんはいますし、最近の印象では発症年齢が徐々に若くなってきている。『40代以上は受けましょう。それ以下は受けなくていい』ではなく、『何歳からでも受けるべき』と考えています」

 乳がん検診を受けなくても触診で……。そう考えている人もいるかもしれない。

「無症状の乳がんは、触診ではわかりません。早期発見には、画像検査が非常に重要です」

■マンモグラフィーだけでは不十分

 乳がん検診で行われる画像検査は、まずマンモグラフィー(以下、マンモ)。乳房専用のX線検査で、左右の乳房をアクリルの板で片方ずつ挟んで撮影する。

 次に、超音波(エコー)。乳房にゼリーを塗り、プローブという器具を当てて、反射波を画像化する。

「国が住民検診として実施している乳がん検診はほぼマンモだけ。しかし、マンモには強みがある半面、弱みもあり、マンモだけでは不十分。超音波との組み合わせが望ましい」

 マンモだけが住民検診となっている理由は、マンモだけが乳がん死亡率を下げるというエビデンスがあるからだ。ただし、このエビデンスは海外のデータになる。

 マンモは乳がんの初期症状である微細石灰化の発見については強いが、しこりには弱い。乳房の中には乳腺という組織があり、乳腺の濃度は人によって異なるのだが、日本人、特に若い人はデンスブレスト(高濃度乳房)という乳腺濃度が濃いタイプが多く、マンモでは乳房全体が白く映ってしまうからだ。

 乳がんの可能性を示すしこりも白く映るため、雪山で白うさぎを探すかのようになり、しこりを見つけづらい。その点、超音波はしこりが黒く映るので、デンスブレストでもしこりと乳腺の区別がつきやすい。

「当院では超音波をメインにし、そこにマンモを組み合わせています。マンモ併用の頻度としては、30代前半で1回、後半で1回、乳がんが急増する40歳以上は毎年。マンモが痛くてつらい人も、2年に1回はマンモを組み合わせることをお勧めしています」

 近年、注目を集めているのが、乳がん発症ハイリスク女性に対するMRI検査だ。日本の乳がん診療では、乳がんの診断後に使われることがほとんどだが、診断前のスクリーニングの段階でMRIを用いる動きが出てきている。

「MRIはマンモや超音波よりも乳がん検出率が高く、マンモや超音波で発見できない乳がんを発見できることもあります。ただ、特異度は他の検査と同等。造影剤の注射も必須で、気軽にできるものではない。乳がんハイリスク女性、あるいは希望者に任意で行っています」

 品川ブレストクリニックは症例数や研究実績から日本乳癌学会関連施設として認定されており、乳がんの発症に強く関わる遺伝子を持っていると診断された人には、MRIスクリーニングを実施している。

【乳腺MRI】「乳がん」「MRI」でネット検索すると「無痛乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」が出てくる。乳腺MRIはがんをより正確に検出するために造影剤が必須となっているが、ドゥイブス・サーチは造影剤を使用しておらず別物。マンモや超音波以上の乳がん検出率の高さを求めるならドゥイブス・サーチではなく乳腺MRIになる。

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