健康長寿のカギは腎臓にあり

慢性腎臓病は適度な運動で生命予後が延び、生活の質が上がる

主治医の先生に相談して適度な運動を
主治医の先生に相談して適度な運動を

 今回は「腎臓リハビリテーション」についてお話ししたいと思います。

 腎臓リハビリテーションは、運動、食事、精神面などを包括して、慢性腎臓病(CKD)の患者さんをサポートするプログラムのこと。公式な学会があり、腎保護の可能性が期待できるとして、いま注目されている取り組みです。

 現在、透析になる前の患者さんに対して腎臓リハビリテーションが行われているクリニックは珍しいです。

 かつて、慢性腎臓病の患者さんには「運動を控えましょう」という指導がされていました。ところがここ10年でそれが変わり、いまは「慢性腎臓病の方も適度な運動をしましょう」と医師が推奨するようになっています。

 慢性腎臓病の患者さんが適度な運動をしたところ、腎保護や生命予後、QOLの面でいい結果が出たというデータが蓄積された。そのため、そのような指導に変わってきたということなんですね。

 適度な運動を推奨する方向に変わったのは、高齢社会であるということも理由のひとつです。慢性腎臓病の患者さんの身体機能は、健康な人に比べて7割程度になる。ご高齢の腎臓病の患者さんの場合、身体機能の衰えは、サルコペニアやフレイルと呼ばれる虚弱状態になる可能性が高くなります。その結果、寝たきりになることが多くなる現状を踏まえ、予防するためにも「適度な運動を行うように」という指導になりました。

 また、慢性腎臓病と診断されたなら、食事療法を始めなければなりません。ところが自分の判断だけで食事療法を行うと、十分なカロリーを取れてないことが多い。さらに、腎臓病の人はうつ病を発症する人が多いというデータがあります。そこで、それらを包括してサポートする「腎臓リハビリテーション」が生まれました。

 当院では運動面ではリハビリセラピストが握力を測るなどして身体機能を確認し、運動指導を行う。食事面では、管理栄養士が日々の食事を書き留めたものを患者さんに持参してもらい、改善点などの指導を行う。

 また、定期的にINBODYという機械に乗ってもらい、体内の状態を計測。体重や体脂肪量はもちろん、筋肉量や体内の栄養評価や肥満評価など細かなところまでわかるので、今後の目標が立てやすくなります。

 運動も食事療法と同じく自己流で始めるのは禁物。透析導入直前の患者さんや、重度の糖尿病の方など、運動を勧められない患者さんもいらっしゃいます。慢性腎臓病と診断されていて運動や食事療法に取り組む場合は、必ず主治医の先生に相談してから行うようにしてください。

森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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