科学が証明!ストレス解消法

物事を先延ばしにしてしまうのは遺伝的要因が関係している

写真はイメージ
写真はイメージ

 なぜ人間は、物事を先延ばしにしてしまう傾向にあるのでしょうか? それは人間が変化を嫌う生き物である──ということが要因のひとつとして挙げられます。

 皆さんの中にも、独自の「やる気」注入法を用意し、なるべく自ら動き出せるように工夫しているという方は少なくないと思います。一方で、いろいろと試してみたものの、「やっぱり面倒な気持ちが勝ってしまいダラダラしてしまう」と、頭を悩ませている人も多いはずです。

 実は、「先延ばしグセは遺伝子が関係している」ともいわれており、コロラド大学のグスタフソンらは次のような実験(2014年)を行っています。

 まず、双子のペアを被験者に、彼らがどれだけ先延ばしするかについて調べたそうです。たとえば、「明日まで仕事を延期してしまう頻度」や、「定期的に締め切りが迫るまで仕事を始められないか」などの質問を設け、答えてもらいました。

 次に、グスタフソンは、すべてのDNAを共有する一卵性双生児の回答と、DNAの半分だけを共有する非一卵性双生児の回答を比較しました。両者の家庭環境、友人関係、教育といった人格を形成するさまざまな要因を比較し、もともと備わっている遺伝子がどれほど重要であるかを調べたわけです。

 その結果、先延ばしする傾向は、環境や教育といった外的要因よりも、遺伝的要因が関係していると結論付けたのです。また、ひとつの傾向として、先延ばしをする人はとても衝動的な性質を持つことも分かりました。

 グスタフソンは、「衝動的な性質は、迅速な決定を下せる能力であり、こうした性質は私たちの初期の祖先たちにとっては有益だった」と述べています。太古の昔では、人類は日々生き残るために、知恵をはじめ、即座に判断できる能力を必要としていました。

 ところが、時代が変わり、さまざまな利便性の高いものが登場すると、中長期的な計画が大切になってきます。すると、衝動性は私たちの目標達成の妨げとなり、結果的に達成できない……。つまり、ずるずると先延ばしにするクセが生まれたと、研究では指摘しています。

 この結果を踏まえ、グスタフソンは「多くの長期的な目標設定が先延ばしグセを回避する上で大切である」と述べています。

 さらには、先延ばしグセは、なかなか前に進めない人や、その人が頼りにしている人の経済的、心理的健康に害を及ぼす可能性があるとも付言しています。ずっと停滞していると、当の本人はもちろん、その周りにいる人まで悪い影響が出てしまいかねませんからね。

 人類は長い間、変化に乏しい環境で生きてきました。しかし、技術が発展した近現代においては、その時代に対応できるマインドが問われるようになりました。であれば、「こういう時代を生き抜くためには、自分には何が必要か」。そんなささいな自問自答が、やる気を後押しするきっかけになるかもしれません。中長期の目標を大事に育ててみることが大切なのです。


◆本コラム待望の書籍化!
『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

関連記事