肩関節を初回脱臼した後、活動性が高い活動をする場合には50%以上もの確率で再脱臼を起こします。そして手術が保存療法より2回目以降の脱臼を起こさない確率が高いことは、複数の研究で証明されています。
日本で行われている手術は、大きくわけて2つあります。
【1】内視鏡による「バンカート修復術」。脱臼で緩んだ靱帯を修復します。
【2】「烏口突起移行術」。烏口突起という骨を肩甲骨に固定する手術になります。
2つにわかれるということは、それぞれに長所、短所があるからで、その内容をお伝えします。
バンカート修復術の長所は、損傷したところだけ修復すること。短所は烏口突起移行術より再脱臼率が高いことです。
一方、烏口突起移行術は再脱臼率が低いのですが、治療で用いるインプラントがもともと体内にあるものでないため、抜けたり、緩んで外れることがあり、時に痛みを引き起こすケースもあります。
これら2つの治療を10年以上経過観察し、比較した研究が、2022年、スイスの施設によって発表されました。発刊して100年以上になるJBJSという整形外科国際雑誌に掲載された論文の内容は、バンカート修復術の再脱臼率が高く、若く活動性の高い患者には烏口突起移行術をすすめるというものでした。
今回の記事では、日本国内の肩関節外科で主に行われている2つの手術の長所・短所をお話ししました。肩関節専門医の中でも、肩関節脱臼に対する手術とその経験には違いがあります。
そのことを知った上で、手術を決断する前にそれぞれの治療の違いについて、診察医師の見解を聞くことは手術前の不安を少しでも取り除くことになると私は強く思います。
■バンカート修復術と烏口突起移行術の違いは表と図で見るとわかりやすい
http://shoulder-doctor.net/sick/sick_3-2.html
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