ニューヨークからお届けします。

人口の4割が肥満症のアメリカ人が糖尿病薬「オゼンピック」に殺到した理由

米国では人口の7割以上が「太り過ぎ」のカテゴリーに(C)iStock
米国では人口の7割以上が「太り過ぎ」のカテゴリーに(C)iStock

 糖尿病の薬オゼンピックに痩せる効果があることが知られるようになり、突然スポットライトが当たっています。背景にはアメリカの深刻な肥満問題があります。

 オゼンピックはノボノルディスク社が販売している2型糖尿病治療薬の商品名で、セマグルチドが正式名称。週1回の注射でインシュリンの分泌を高め、代謝をよくすることができます。食欲を抑える働きもあるため、肥満症の薬としても認可されていますが、それほど知られていませんでした。

 ところが「オゼンピックに痩せる効果がある!」というTikTokの投稿がバイラル化したために多くの人が殺到、品薄になり糖尿病患者が困惑しているというニュースまで出ました。

 その背景には、年々悪化するアメリカの肥満事情があります。

 現在人口の7割以上が「太り過ぎ」のカテゴリーに入りますが、中でもボディマス30以上の肥満症が4割もいるのです。その数は2000年には3割だったのが、10年間で激増したこともわかっています。

 心臓疾患や糖尿病などあらゆる成人病の原因としても深刻視される肥満症を、どう解決するのか?

 例えば500万人ものメンバーがいる、アメリカを代表するダイエット会社「ウェイト・ウォッチャーズ」ではこれまで、食生活を改善し、皆で支え合うことで健康に痩せようというプログラムを組んできました。ところが先日、「ウェイト・ウォッチャーズ」が「シークエンス」という遠隔医療サービスの会社を買収したのです。シークエンスは例のオゼンピックなど痩せるための薬を処方してくれることで知られています。

 食生活の改善やエクササイズだけでは痩せられない、深刻な肥満症に対して今後は薬での治療が主流になっていくのは間違いないようです。

 一方で、本当に必要な特に糖尿病患者に渡らなくなるというようなことも、これからは起きてくるだろうと懸念されています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事