東京の街で移動中にトイレに行きたくなったら、まずどこに向かいますか? おそらく駅でしょう。でもニューヨークの地下鉄駅でトイレを探しても見つかりません。
ニューヨーク、いやアメリカは世界でもまれなる公衆トイレの砂漠地帯です。
2021年イギリスのトイレ用品会社の調査によると、人口当たりの公衆トイレの数が最も多いのは、アイスランドで10万人当たり56個。それに比べニューヨークは10万人あたりわずか4個、全米の平均は8個で、どちらも大して変わりません。同じ調査で日本は11個となっていますが、東京など中心部はもっとずっと多い感じがします。少なくとも、ニューヨークのように、やっと見つけたホテルのトイレは宿泊客専用で、鍵がかかっていたというような悲しい経験はありませんから。
ではなぜニューヨークには公衆トイレがこんなに少ないのか? ニューヨークタイムスの記事によれば、1930年禁酒法の時代には、200万個ものトイレが公園などに設置されたそうです。それまでのようにバーで用を足せなくなったからというのが理由です。
しかし1970年に市が破産寸前になると、管理不能になり多くが閉鎖されました。その後有料トイレの実験が行われましたが、男性用の小便器は無料なのにドア付きは有料という方式だったため、ジェンダー差別だという批判が巻き起こり、全てのトイレが撤去されてしまいました。
また公衆トイレは、ドラッグ使用やレイプなどの犯罪の巣になるリスクがあることも、駅などに設置されない理由と考えられています。
一方日本はじめアジア諸国には、公衆トイレは危険で汚い場所というイメージがないことが、アメリカとの大きな違いと指摘されています。
同記事では、渋谷区に新たに設置された奇抜なデザインの公衆トイレの写真を掲載していますが、こんなすごい物でなくてもいい。公衆衛生の向上のために、少しでもトイレを増やしてほしいというのが、ニューヨーカーの切実な願いです。
ニューヨークからお届けします。