ニューヨークからお届けします。

AI開発を止めろ!イーロン・マスクら「人類への深刻なリスク」と警鐘

chatGPTは最新テクノロジーの主役に踊り出たが…
chatGPTは最新テクノロジーの主役に踊り出たが…(C)ロイター

「AIの開発を一時的に止めるべき」という公開レターが話題になっています。イーロン・マスクやアップルの共同創立者スティーブ・ウォズニアッキら1000人のテック・リーダーが署名。理由は「AIには社会と人類への深刻なリスクがあるから」としています。

 AI開発はこのところ急速な進展を遂げています。昨年末に発表されたChatGPTが、最新テクノロジーの主役に躍り出ました。それに加わったGPT-4の能力の高さが衝撃を与えています。

 今回発表された公開レターは、非営利団体フューチャー・オブ・ライフ・インスティテュートによるものです。「AI開発者は手のつけられない開発戦争に巻き込まれている。当の開発者でさえも理解、予測、また確実に制御できない、これまで以上に強力なデジタル・マインドを展開しようとしている」と警鐘を鳴らしました。

 ChatGPTはこれまでのチャットボットとは桁違いの能力で、まるで生身の人間と会話しているかのように感じます。特にZ世代には大人気で、ChatGPTの膨大な知識や整理能力などを使ってレポートを書く大学生も少なくありません。

 しかし、これがもっと高い能力を持てば、多くの人が現在の職を失う可能性も指摘されています。またいくらAIとはいえ間違いもあるわけで、それが誤情報を蔓延させ、2年前の議会襲撃のような事件から、最悪の場合は戦争を引き起こす可能性も考えられます。また、病気やメンタルヘルスに関する間違った情報が、健康リスクにつながるかもしれません。

 ディープ・フェイクと同様、あまりにリアルなチャットボットのために、人間は現実と虚構の境目がわからなくなってしまうことは、使ってみるとよくわかります。

 レターでは、「AIは人間の未来を変えるもの。だからこそこうしたリスクを防ぐための方策を、これ以上の開発を進める前に業界と政府が一緒に考えるべき」と、強く指摘しています。もちろん同意しない開発者も多いのですが、一石を投じるものになってほしいと思います。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事