75歳の偏食医師が教える 好きなものを食べ、飲みながら健康長寿を実現する2つの秘訣

できることからトライしてみよう
できることからトライしてみよう

 好きなものを食べ、好きなものを飲んで、元気に長生き--。まさにこれを具現化しているのが医師の石原結實さん。その秘訣は?

 記者は、石原医師とともに食事をしたことが何度かある。だいたい夕方5時くらいに集まり、夜8時前には解散、となるのだが、石原医師の食べっぷり、飲みっぷりは、同席する数十歳年下の我らを毎回上回る。先日はイタリア料理店でビールと白ワインを飲み、前菜、ポテトフライ、ピザ、パスタを平らげ、2軒目の店でビールをグビグビ。もちろん翌朝は早朝から仕事。1948年生まれ、今年75歳になるとはとても思えない。

「かれこれ50年ほど病気知らず。風邪すらひいていません。1年365日、東京と伊豆を行ったり来たりして診療し、全国各地で講演、合間に執筆活動と、休みなしの日々です。週4日、1回につき10キロのジョギング、週2回の50~100キロのバーベルを使ったウエートトレーニングも行っています。疲れも感じず、むしろ体は軽いですね」

 その健康の秘訣は、「食べ過ぎない、空腹の時間をつくる」だという。石原医師が行っている方法を次に挙げよう。

■週1回、1日断食

「毎週月曜日、断食の日を設けています。ニンジンとリンゴを搾ったジュースをグラス2杯、朝昼夕と計6杯飲み、黒糖入り生姜湯を計2~3杯飲みます」

■夜だけ“好きなもの”を好きなように食べて飲む

「月曜以外の週6日は、朝にニンジンジュース2杯、昼は黒糖入りの生姜紅茶1~2杯。代わりに夜は好きなものを好きなだけ食べます。お酒も制限していません。自宅にいる日は、毎日ビール2本、焼酎のお湯割り2杯を必ず飲みます」

 “好きなもの”というのは、石原医師は極端な偏食で、肉、魚、卵、牛乳、バター、マヨネーズが嫌いで食べられないので、動物性食品は、エビ、カニ、イカ、タコ、貝などの魚介類とチーズだけ、ということになる。

 石原医師の健康ぶりは、検査数値でもはっきりと証明されている。2022年12月1日の最新の血液検査結果では、栄養状態を示すタンパク質(アルブミンなど)は正常、肝機能正常、糖尿病を示すHbA1c正常、コレステロールや中性脂肪正常、尿酸正常……。正常のオンパレードだった。

石原結實氏(提供写真)
石原結實氏(提供写真)

■免疫力をアップさせ、長寿遺伝子を活性化

「小食や断食の効果は複数の研究で証明されています。たとえば、2000年に米マサチューセッツ工科大学の学者が、空腹の時間を長く保つとサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化し長生きすることを発見しています。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授が解明したオートファジー(自食作用)は、空腹状態が16時間続くとオートファジーが働くというもの。細胞が新しいものに変わりアンチエイジングの効果があるのです。空腹になると、免疫の主力となる白血球ががん細胞やウイルスなどの有害物質をエサにし処理するため、免疫力が高まる。胃腸が休まり、血液中の老廃物がなくなり、空腹時に分泌されるホルモンが脳の海馬で神経同士を結びつけるシナプスを活性化して記憶力を向上させます」

 石原医師が心掛けていることが、もうひとつある。それは「体を温める」。

「生活状態と白血球の関係を調べると、入浴後と運動後に白血球の機能が増強するという結果でした。つまり、体温が上昇すると、白血球の殺菌力や貪食力(体内の細胞が不要なものを取り込み分解する作用)が促進されるのです。体温が1度低下すると、免疫力が30%減弱するという研究結果もあります」

 石原医師が常飲している生姜湯や黒糖入り生姜紅茶は、体を温める作用に優れている。魚介類やチーズも体を温める。ジョギングやウエートトレーニングは、それ自体が体を温める上、筋肉量を増やす。筋肉の多い人は、しっかりと熱をつくることができるので、体が冷えにくい。

「同じようにはできない……」とハナから否定せず、まずはできることからトライしてみよう。朝または昼だけをニンジン・リンゴジュースや黒糖入り生姜紅茶にしたり、月1回は石原院長がやっている断食を取り入れたり、汗ばむ程度のウオーキングをしたり。GW中の1日を、新たな一歩を踏み出す日に充ててはいかが。

▽石原結實 イシハラクリニック院長。伊豆で断食施設も運営。健康に関する著書多数。最新刊の「65歳からは、空腹が最高の薬です」(PHP新書)が話題。

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