美容意識が強い女性でも、日焼け止めの選び方・使い方を間違っている人がかなりいる。男性ならなおさらだ。メディカルプラザ江戸川(東京・江戸川区)皮膚科の松本千夏医師に聞いた。
「美容の基本は、365日、日焼け止めを塗ること。どんなに高級な化粧品を使っていても、基本を怠るとかなりのダメージが皮膚に蓄積され、シワ、シミ、皮膚のたるみの原因になります」
日焼け止めは、皮膚がん対策にもなるし、老人性イボと呼ばれる脂漏性角化症の対策にもなる。
「脂漏性角化症は中高年で増えるイボで、隆起した褐色のシミのようなものです。紫外線の影響を受けてできるので、若い頃にゴルフなどで無防備に日焼けしていた人に多い。良性で、保険診療で治療ができますが、時間もお金もかかり、また完全に消えず、悩んでいる人も少なくないのです」
絶対に押さえたいのが、下記の項目だ。
【屋内・車内でも塗る】
紫外線の波長にはUVAとUVBがある。UVAの方が波長が長く、皮膚の深くに入りこむ。
「UVBは窓などで遮断されることがありますが、UVAはそうではなく、すぐに目に見える症状がなくても、長期的にはシワやたるみを引き起こします。外出しない日も、一日の始まりに日焼け止めを塗る習慣を身につけてください」
紫外線は衣服やマスクも通過するので、それらで隠れている部分も日焼け止めが必要だ。
【SPFの高さより、塗り直しが大事】
UVA、UVBへの効果の度合いを示すのが、SPF、PAの表示。SPFでは数値の大きさで、PAでは「+」の数で、効果の強さを示す。
「海や山のレジャーではSPF50やPA++++といった効果の高いものを使うことをお勧めしますが、それらは肌への負担も大きいので、日常使いではもっと数値が小さいもので十分。よくあるのが『効果の高いものを使っているから、朝1回塗ればOK』という勘違いです。効果のレベルに関係なく、日焼け止めは数時間おきに塗り直すようにしてください」
汗をかかなくても、こすったり、皮脂の影響で取れたり効果が薄れるので、塗り直しは不可欠。
【薄すぎては効果を十分に発揮できない】
一般的に、クリームタイプならパール粒2個分、ローションなら1円玉2個分。商品によって適量が異なるので、表示内容をチェックする。
「手のひらに日焼け止めを出し、両手をこすり合わせて手の上でのばしてから顔に塗る人が結構います。この方法では、日焼け止めが手のシワの間に入ってしまい、思っている以上にきちんと塗れておらず、塗りムラもあります。片方の手のひらに日焼け止めを出し、指ですくっておでこ、頬、鼻の上、顎と各部位にのせ、丁寧にのばすようにしてください」
【化粧落としのクレンジング剤で落とす】
「せっけんで落とせる」などと記載されていない限り、クレンジング剤で日焼け止めを落とす。
「肌に残ったままでは、日焼け止めが酸化し、肌へダメージを与えます」
【肌が赤くなったら皮膚科へ】
普通の日常生活を送る中で、顔、首、手が赤くなったり刺激感を覚えたりしたら、皮膚科へ。
「光線過敏症かもしれません。中高年で突然発症する人もいます。光線過敏症は膠原病など内臓の病気がベースで発症することもあり、光線過敏症の発見が、内臓の病気の発見につながる場合もあるのです」
【アトピー性皮膚炎は乾燥しにくい日焼け止め】
粉入りの振ってから使うタイプの日焼け止めは、肌が乾燥しやすい可能性があり、アトピー性皮膚炎には向かない。
「ジェルタイプや、敏感肌用の方向けのノンケミカルの日焼け止めがお勧め。一方、ニキビ肌は、その発生につながる成分を極力排除したノンコメドジェニックの日焼け止めを選ぶといいでしょう」
【「飲む日焼け止め」も、「塗る」と併用】
「飲むタイプも出ていますが、塗る日焼け止めのように皮膚を表面からコーティングしてくれるわけではありません」
「塗る」は必須だ。