マスクは積極的に外すべき…公衆衛生に詳しい専門医が推奨 WHOも「緊急事態」の宣言解除

観光客の数も増えてきた
観光客の数も増えてきた(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日に2類相当から5類に変わった。毎日発表されていた新型コロナの感染者数は医療機関全体から報告された全数報告から毎週金曜日に指定された全国約5000の医療機関の定点観測数に変わる。また、新型コロナに関係する費用も原則公費から自己負担へと変わる。

 マスクは3月13日から「屋外では原則不要、屋内では原則着用」が個人の判断となっており、それ自体は変わらないが、飲食店や宅配などの従業員は「着用必須」から「個人の判断」に変更する企業や事業者も出てきた。それでも、「新型コロナ感染症は消滅したわけではない。まだマスクは外すべきではない」との意見も少なくない。どう考えるべきか? 公衆衛生に詳しい、岩室紳也医師に聞いた。

「いまも周囲の目を気にしてマスク着用を習慣化している人は少なくありません。しかし、そろそろ何のためにマスクをしているかを考え、積極的にマスクを外すべきです。新型コロナの正体がわからなかった流行初期の段階は別にして、個々人が行う感染予防対策だけでは防ぎ得ない感染症に対して、海外がすでに実践しているように集団免疫を目指すべきです。すなわち、感染した人たちが80%を超えれば結果としてその集団の予防になるのです。ワクチン接種による集団免疫獲得は一定の効果があり、2021年の10月から12月にかけて日本人のワクチン接種率が80%を超えた結果、感染者の報告は激減し続けました。しかし、当時はさまざまな理由からその後のワクチン接種が先延ばしとなり、結果として集団免疫力が下がり、第6波となりました。この時期を除き日本が最後まで新型コロナに苦しんだのは、抗体を持つ人の割合が他の国に比べて低いからです。その原因は、抗体保有者を増やす手段としてワクチン接種による免疫獲得も徹底されない上に、感染することへの恐怖心があおられ続けたからです。つまり、80%の人がワクチンを4カ月程度の短い期間で打ち続けないのであれば、実際にウイルスに感染しても重症化しない人の割合を80%に高める必要があります。特に若く元気な人はマスクは原則外しつつ、他の人の飛沫が口に入らないようにすればいいのです。そうすることで不顕性感染が増えて、抗体保有者が多くなり、感染弱者を守る集団免疫が完成します」

■自分自身の重症化リスクを確認

 WHO(世界保健機関)が5日に新型コロナウイルス感染症による「緊急事態」を終了させたのも、集団免疫獲得などを通じて重症者や死者が世界的に減少していると判断したからだ。実際、1週間当たりの死者数は21年1月に一時10万人を突破したが、今年4月下旬には3500人台に減っている。世界の感染者数のデータを集計・発表してきた米国のジョンズ・ホプキンス大学も3月10日にデータの更新を終えている。

「感染者数が激増する中、行動制限を緩める欧米の方針に眉をひそめた日本人は少なくありませんでした。しかし、欧米は結果として抗体保有率が高まり、早く鎮静化しました。私は今回の新型コロナを経験して、感染症対策は新型コロナ前のインフルエンザ対策こそが良い方法だったと感じています。重症化リスクのある人、受験などでどうしても感染・発症などを避けたい人がワクチンを含めた対策を取り、重症化リスクが低い健康な人は元気に過ごす。そのことで国民全体の抗体保有率を高めていくことが大切だと思います」

 むろん、日本では6日時点で前日比6000人以上の人が新規陽性者となり、重症者が1人、死者も12人報告されており、重症化リスクの高い人は引き続き、マスクの意味を考えつつ感染経路対策を徹底する必要がある。

「感染リスクの高い人は屋外ではマスクを外しても、人が多く集まる屋内では思わぬ咳を浴びることも考えマスクをした方がよい場面もあると思います。ですが、個別包装ではないマスクを持ち歩くと、そもそもポケットに入れている段階でマスクが汚染されている可能性を承知しておいてください。大事なことは、自分自身が感染リスクの高いタイプかどうかを知ることです。治療で医療機関を受診したり健康診断などを受ける場合、医師らにそのことを確認することが大切だと思います」

関連記事