だからあなたの頭痛は治らない

映画館では上映前に甘いポップコーン…これで片頭痛の痛みは軽減する

映画観賞は甘いポップコーンを食べながら
映画観賞は甘いポップコーンを食べながら

 映画を見ると、激しい頭痛が起きることがあるのですが……。

 先日、患者さんからこんな相談を受けました。実はこれ、片頭痛に悩まされている患者さんから多く受ける相談なのです。

 映画館で映画を見るとき、場内は照明を落とした真っ暗な状態になっています。その暗い中で大きなスクリーンから映画が流れると、光をことさら強く感じてしまいます。

 さらにいうと、音の問題もある。最近の映画館は音響にこだわって、“良い音”を追求する流れになっていますよね。片頭痛と縁のない人にとっては、臨場感を存分に体感できるありがたいもの。ところが、片頭痛持ちの人にとっては、脳が瞬時に興奮して頭痛を誘発させる可能性が高くなってしまうのです。

 特に、スクリーンが大きくなって映像がより鮮明に、そして音響が良くなったここ10年ほどで、同様の悩みをよく相談されるようになりました。

 冒頭の患者さんに、「映画では必ず片頭痛が起きますか?」と聞いてみると、「映画館にはよく行きますが、毎回必ずではありません」。そこで、過去に映画館でひどい頭痛が起きたときのことを思い出してもらったのです。

 すると、ポイントは空腹にあることがわかりました。強い光、大きな音に加え、空腹は片頭痛誘発因子のひとつ。血糖値が低下すると脳血管が拡張し、血管周囲の三叉神経を刺激、結果この情報を大脳が読み取り、興奮状態から危険信号としての頭痛に変わるのです。この患者さんもそれに当てはまるのではないかと考えた私は、映画を見る際には空腹にならないようにアドバイスしました。

 映画館には甘いポップコーンが販売されていますよね。空腹なら、そういったものを食べながら観賞するのもいいし、観賞前にアメ玉をひとつ食べるだけでも誘発リスクは減少します。空腹による頭痛をすぐに和らげるのには、糖分を摂取して血糖値を上げるのが効果的だからです。むろん、大きな音や強い光というリスクはまだありますが、この患者さんの場合は空腹が大きな引き金となるようなので、そうしたアドバイスをしました。空腹を避けるようになってからは、ひどい頭痛はあまり起きてないということです。

 片頭痛は、誘発因子が2つ以上重なると、より痛みが出やすくなるといわれています。だから、どういうときに痛みが出ているかをチェックし、考えられる誘発因子の数をできる限り少なくすることが重要。

 今回の強い光、大きな音、空腹に加え、前回は香りも誘発因子になるとお話ししました。さらに、睡眠不足や睡眠過剰、ストレス、疲労、人混み、たばこ、女性であれば月経前……。

 ワインを飲みながらチョコレートやチーズ、ナッツを食べると片頭痛がひどくなるという方もいらっしゃいましたが、ワイン、チョコレート、チーズ、ナッツなどの血管拡張因子であるチラミンやポリフェノールを含む食品はいずれも片頭痛の誘発因子です。人によって何が片頭痛をより誘発するかは異なります。自分にとっての要注意な誘発因子を知ることが、片頭痛とうまく付き合っていくコツのひとつといえるでしょう。

清水俊彦

清水俊彦

東京女子医大脳神経外科客員教授。「汐留シティセンターセントラルクリニック」の頭痛外来には全国から患者が訪れる。

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