飲酒は「腎臓」にも大きなダメージを与える…缶ビール1日3本以上は危ない

日本酒は3合まで…(写真はイメージ)
日本酒は3合まで…(写真はイメージ)

 毎日、日本酒を3合以上飲む習慣があると、腎機能低下のリスクにつながる──。先月、そんな研究結果が大阪大学から報告された。腎機能が低下し慢性腎臓病(CKD)を発症すると、人工透析のリスクが高まる。毎日晩酌の習慣がある人や、腎機能の数値が気になる人は知っておきたい。同大学キャンパスライフ健康支援・相談センター教授の山本陵平氏に詳しく聞いた。

「特定健診を受診した40~74歳の30万人を対象に、約3年間追跡調査した結果、毎日日本酒3合(純アルコール60グラム)以上飲む男性は腎機能が1年間で0.7%、3年間で2%低下していました。全く飲まないと答えた人も1年間で0.3%、3年間で1%低下がみられた一方で、ときどき飲むと回答した人はほとんど腎機能に低下がみられませんでした」

 大量飲酒というと、これまでは肝硬変や脂肪肝など、肝臓の病気に対するリスクと深く関係していることが知られていたが、今回の研究で新たに腎機能低下との関連が明らかになった。腎臓は自覚症状が現れにくい沈黙の臓器と呼ばれ、一度悪くなったら元通りに回復するのが難しい。慢性腎臓病を発症し進行すると、高血圧から心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクも高まるので注意が必要だという。

「お酒と腎臓がどのように関係しているか現時点でははっきり解明されていませんが、血圧との関係が考えられます。腎臓病患者が最も気を付けたいのが高血圧と高血糖です。お酒を飲むと血圧が上昇するので腎臓に負担がかかり、腎機能を低下させるのではと考えられます」

■1日20グラムのアルコールならプラス

 一方で、適量であれば腎機能低下を予防する可能性があると、今回の研究で改めて確認された。1日純アルコール20グラムの飲酒は、腎機能低下予防のほか心筋梗塞や脳梗塞の発症も抑制するという。

「適度にアルコールを飲むと、動脈硬化を防ぐ役割を担う善玉(HDL)コレステロール値が上がり、体内の血液はサラサラになる傾向があります。心筋梗塞や脳梗塞は血液が固まると発症するので、この善玉コレステロールが発症予防に働いている」

 腎機能は、糸球体濾過量(GFR)の検査値で判断される。GFRとは、フィルターの役割を担う糸球体が、1分間にどのくらいの血液を濾過して尿を作るかを表した数値のこと。出生時の腎機能を100%として60%に達すると、腎機能が低下していると推定される。腎機能が15%まで低下すると人工透析治療が検討されるという。特に高齢者の場合、1年で平均1%ずつ自然に低下するのでお酒を飲む習慣が日頃からある人は気を付けたい。

 摂取アルコール量の目安は以下になる。

20グラム…缶ビールなら500ミリリットル1本、日本酒なら1合、ウイスキーならダブル1杯
60グラム…缶ビールなら500ミリリットル3本、日本酒なら3合、ウイスキーならダブル3杯

 純アルコール量(グラム)=お酒の量(ミリリットル)×アルコール度数/100×0.8(アルコールの比重)で計算できるので、お酒を飲む際は適宜計算するといい。

「1日60グラムを超える飲酒量は避け、20グラムでたしなむ程度にとどめましょう。20グラムが腎機能低下の予防に良い効果をもたらすからといって、体質的に飲めない人まで無理して飲む必要はありません。塩分が多いおつまみも血圧を上昇させるので意識して控えてください」

 特に女性の場合、体格の小ささから体内の水分量が少なくアルコールの代謝能力が弱い。血中アルコール濃度が高くなりやすいので、飲酒量は半分から3分の2くらいにとどめておくといいという。

 また、アルコールを摂取すると利尿作用が高まり脱水になりやすい。脱水で体内の水分量が減ると血液量も減少し、腎臓へ十分に血液が行き渡らなくなって腎機能は低下する。

「高齢者の場合、加齢に伴い基礎代謝が低下して細胞内の水分量は減少します。さらに加齢による腎機能の低下から多尿になり、より体内の水分は失われやすくなります。お酒を飲む際は、あわせて適度に水を飲むのが脱水予防に有効です」

 自分が生まれたときの体重が2500グラム未満だった人も注意したい。低出生体重児は将来的に高血圧や慢性腎臓病になりやすいことが近年の研究で分かっている。

「腎臓には一般的に尿を作る役割を担うネフロンが左右それぞれに約100万個ありますが、低出生体重児は生まれつきその数が少ない。腎機能は加齢に伴い低下するうえ、元から数が少ないと普通の人より腎機能が悪くなる速度が速いのです」

 現在、日本国内での人工透析患者は約34万人いると推計されている。年間約3万人が新たに人工透析を開始し、その数は増加の一途をたどっている。

 腎臓を守るためにも、お酒は適量にして毎日の晩酌を楽しみたい。

関連記事